ロッド・スチュワートが語る「年相応な」ニューアルバム制作秘話

30枚目のスタジオアルバムとなるニューアルバム『ブラッド・レッド・ローゼズ』について語ったロッド・スチュワート(Photo by Rankin)

ロッド・スチュワートが、30枚目のスタジオアルバムとなるニューアルバム『ブラッド・レッド・ローゼズ』制作のインスピレーション、作曲を続ける原動力についてローリングストーン誌に語ってくれた。「1000万枚売れなくたって気にしない。最近は、自分と友人のためにアルバムを作っている」。

米現地時間9月28日にリリースされたニューアルバム『ブラッド・レッド・ローゼズ』のために曲を書き始めたとき、ロッド・スチュワートは自分のやりたくないことがはっきりわかっていた。「『ステイ・ウィズ・ミー』とか『ホット・レッグス』とか、『今夜きめよう』みたいな曲は書きたくなかった」と、ロッドは言う。「もう少し、年相応なことをやりたかった。その点では上手くいったんじゃないかな」

73歳のアーティストにとって今回ノアルバムは、2013年の『タイム』に始まり、2015年の『アナザー・カントリー』に続く創作活動の再スタート期を飾る1枚だ。これらアルバムがリリースされるまで、10年以上も作曲活動を休止し、『グレート・アメリカン・ソングブック』シリーズやその他カバープロジェクトに専念してきたが、ついにオリジナル作品を作りたいという虫がうずいてきた。本人曰く、2012年に回顧録『ロッド:ロッド・スチュワート自伝』を書いたことが大きな契機になったという。また、ニューアルバムを制作するのに、もはや薄暗いスタジオで延々と徹夜して仕上げる必要はないことにも気が付いた。「以前は何カ月もぶっ通しでスタジオにこもりきりだった」とロッド。「たったひとつのドラムサウンドのために2時間も費やしていた。日の光を見ることなんてなかった。もはや苦行だったよ」

だが、最新テクノロジーのおかげでツアーの合間にホテルの部屋で簡単にレコーディングすることが可能になり、以前よりずっと楽になった。さらに、プロデューサーで作曲のパートナー、ケヴィン・サヴィガーも、キーボードとしてツアーに同行。「いまでは、前よりずっと太陽を拝めるようになったよ」とロッド。「ケヴィンと俺は、サンプリング素材を使うようになった。新しいアイデアをいろいろ試して、そこから曲作りを進めていくんだ」

リードシングルの「ディドゥント・アイ」は、スチュワートがある日思いついた歌詞から生まれた。「君のために努力が足りなかったのだろうか? 君が勉強を続けられるよう努力してきたつもりなのに」 このフレーズから、娘の深刻な薬物中毒に直面した父親の悲痛な物語が完成した。「今まで、じっくり腰を据えてこの手の曲を書こうと思ったことはなかった」と彼は言う。「いまの曲作りのやり方は、トラックに『ラララ・・・』とメロディをつけて、心に浮かんだことをそのまま歌にしている。大昔に「マギー・メイ」を書いた時と同じやり方だよ」

もうひとつ「フェアウェル」は、スチュワートの大親友の1人に当てた悲しい曲。「60年代から70年代、80年代、そして90年代まで、俺たちはずっと一緒だった」と本人。「つまり、俺がまったくの無名で無一文だったころから知ってて、その後の成功もずっと見守ってくれたやつなんだ。この曲では、可能な限り自分に正直に、自分らしさを表現しようと思ったんだ」

一方で「コールド・オールド・ロンドン」では、1990年にモデルのレイチェル・ハンターと出会うまでの、苦悩に満ちた時代を振り返る。「ヤりまくり、飲みまくりの毎日で、にっちもさっちもいかなくなっていた」と彼は言う。「いつも物足りなくて、どんどん若い子ばかり追い掛けるようになっいた。この曲は、俺の人生のそんな時期を振り返った曲だよ」。



数週間前、「ディドゥント・アイ」はビルボード・アダルトコンテンポラリー・チャートでトップ10にランクイン。ロッド・スチュワートのオリジナル楽曲が10位圏内にランクインするのは、1999年以来のことだ。だが、彼のアルバムに対する展望は現実的。カーディ・Bやドレイクの最新作と並んでチャートインするとは夢にも思っていない。「俺にはたくさん友達がいる。何年も俺のキャリアを追い掛けてくれた友達が、大勢いるんだよ」と本人は言う。「世界中どこでも、たくさんのファンがコンサートに来てくれる。こうした素晴らしいオーディエンスの10%でもアルバムを買ってくれたら、それで十分だ。何百万枚ものアルバムセールスを飛ばす成功はもう十分味わっているしね。もしこのアルバムが1000万枚しか売れなくても気にしない。誰にでもそういう時期はあって、俺の順番はもうめぐってきたってこと。いま俺は、自分や友人のためにアルバムを作っているんだ」。

すでに次のアルバム制作をスタートしたというロッド。「新曲のテーマがどういうものになるかまだ分からないけれど、18カ月もすれば、15曲かそこらいい曲が出来上がってると思う」


Translated by Akiko Kato

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