米国人芸術家がテキサスのメキシコ国境で記録した「現実」

ひとりの女性が床の上に座って静かに泣いていた。彼女は貧困のため、2人の息子を残してホンジュラスを離れざるを得なかった。息子の1人は、彼女が家を出た後に亡くなってしまったという。また別の母親は、イライラしながら手の中でコインをこすり合わせていた。彼女は、自分の父親が長鉈で家族を殺そうとしたため、6歳の息子と共にグアテマラを離れた。彼女と一緒に拘留されているほとんどの人たちは、ぎゅうぎゅう詰めの“冷蔵庫”を出たい一心で、彼らが理解できない英文の書類にサインしたという。「“サインしなければ出してもらえない”と思った。書類に何が書かれているか誰もわからないが、恐らくほぼ全員がサインしていると思う」と彼女は証言した。

バスステーションに集まった家族の多くの両親は、カトリックの慈善団体が配布している黄色の封筒を持っていた。封筒には“助けが必要です。私は英語が話せません”と書かれている。その周りでは子どもたちが踊ったり飛び回ったり、だだをこねていた。ひとりの男の子が私に近づいてきて言った。「Dibuje mi mami(僕のママを描いて)」



Translated by Smokva Tokyo

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