現在最も注目すべきラッパー「ノーネーム」が語る、ラップを辞めなかった理由

シカゴ出身のラッパー、ノーネーム(Photo by Erik Tanner for Rolling Stone )

現在最も注目すべきラッパーと賞賛される、シカゴ出身の女性ラッパー「ノーネーム(Noname)が、カルト・クラシックとなったデビュー作『テレフォン』よりもダークで緻密、そしてよりパーソナルな新作『ルーム・25』を発表した。

2016年にデビューアルバム『テレフォン』を発表して以来、ノーネームという名前は耳の早いリスナーの間で急速に知れ渡っていった。しかし同作を発表する前、彼女はラップをやめることを考えていたという。

「昔は体が不自由な人々の面倒を見る仕事をしてたから、それに戻るのも悪くないって思ってた」彼女はそう話す。「資格をとって看護婦になることも考えたの。音楽以外で興味のある仕事と言ったら、それしか思い浮かばなかったから」

当時、彼女は音楽で生計を立てることができずにいた。「時々どこかの大学の学園祭に出たり、300ドルとかで誰かの作品に参加してたけど、毎月の家賃を払うだけで精一杯だった」彼女はそう話す。「とにかくお金がなくて、このまま続けるべきか、それとも定職に就くべきか、毎日自問してたの」

彼女がゲスト参加した作品のひとつに、チャンス・ザ・ラッパーが2013年に発表した出世作『アシッド・ラップ』がある。シーンを席巻し、新たなスタンダードを確立した同作は、等身大のキャラクターと大胆不敵なリズム感を武器とする彼女を世に紹介し、ヘッズたちはその動向に注視するようになった。

約3年後、『テレフォン』のリリースと同時に状況は一変した。「やっと経済的に安定した生活が送れるようになったの。シカゴからも引っ越したわ。あの街を出たいとずっと思ってたから」

『テレフォン』でその名前を轟かせた彼女だが、次作を完成させるまでには数年間の歳月を要した。満を持して発表される『ルーム・25』で、彼女は前作で手にした成功に真正面から向き合っている。しかし何よりも特筆すべきなのは、前作を成功に導いたフォーミュラに磨きをかけつつ、彼女が自身のより深い部分を表現してみせたことだ。

2016年、ノーネームは『テレフォン』をレコーディングしたロサンゼルスに活動の拠点を移したが、当初はそれほど積極的に曲作りをしていなかったという。しかしある日、彼女は突然感化される。そのきっかけは、人々が未だに『テレフォン』を聴き続けていると知ったことだった。

過去数年間、シーンはかつてないペースで推移していった。ストリーミングの恩恵に預かる形で、名実共に最も人気のあるジャンルとなったヒップホップは、その傾向が他のどのジャンルよりも顕著だ。毎週のようにビッグなタイトルがリリースされ、リスナーをしばらくの間夢中にさせる。そういった状況下で、長期間に渡ってリスナーを増やし続けた『テレフォン』は、現代のラップシーンにおけるカルト・クラシックとなった。同作の発表から2年以上が経った現在でも、彼女は頻繁にツアーに出ている。本誌の電話取材が行われた当日、ヨーロッパツアー中の彼女はプラハにいた。

「嘘みたいだけど、今年はコーチェラに出たの」彼女は笑ってそう話す。「前のアルバムが出てから2年も経ってるのに、コーチェラに出てオーディエンスを盛り上げられるアーティストって、最近はあんまりいないと思うの」

Translated by Masaaki Yoshida

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