米チャート初登場上位を記録した歌姫「クリスチャン・ミュージック」ジャンルでは20年ぶりの大快挙

Jeremy Cowart

初登場でチャート上位にランクインしたローレン・デイグル。ラッパーやポップスターら強豪を押さえニューアルバムが初登場3位にランクインした。アメリカにおけるクリスチャン・ミュージックの根強い人気が浮き彫りになった。

今週のビルボード・アルバムチャートは、ポール・マッカートニーが変わらず首位をキープした。新作『エジプト・ステーション』のセールスは15万3000ユニットを突破、従来のアルバムセールスに換算すれば14万7000枚に相当する。2位は先週同様エミネムの『カミカゼ』で、リリース2週目のセールスは13万6000ユニットだった。

だが、上位2名に続いてランクインしたのは、27歳のクリスチャン・シンガーのローレン・デイグルの『Look Up Child』。ドレイクやアリアナ・グランデ、マック・ミラー、パット・マローン、トラヴィス・スコット、ニッキー・ミナージュといった面々を押さえて、予想外の第3位。11万5000ユニット、従来のアルバムセールスでいえば10万3000枚のセールスを記録した。もっとも、前述のアーティストらのアルバムは発売から数週間経っており、デイグルのアルバムが初登場というのもある。だが、『Look Up Child』発売週のセールスのすごさは、過去のトップアーティストらに匹敵するものがある。たとえば、アーケイド・ファイアは昨年『エヴリシング・ナウ』のリリース週に10万枚のセールスを記録し、アルバムチャートNo.1に輝いたし、カミラ・カベロの『カミラ』も11万ユニットのセールスで初登場1位にチャートインしている。

『Look Up Child』は、2018年のクリスチャン・ミュージックで最多セールスを記録したアルバムとなった。そればかりか、過去9年間のクリスチャン・ミュージックでも最多記録、さらにクリスチャンミュージックの女性アーティストとしては20年ぶりの大快挙となった。この背景には、コンサート&アルバム、グッズ&アルバムの抱き合わせ販売によるところが大きいが、とはいえニールセンのデータによれば、従来の小売セールスも絶好調。Daigleの2015年のデビューアルバムも100万枚を突破した。今週ニューアルバムが初登場で上位にランクインしたのを受け、本人も「喜びで胸がいっぱい」と、ローリングストーン誌とのインタビューで語った。幅広い層のオーディエンスに自分の音楽を聴いてもらうのが夢だったという彼女は「音楽がもっとジャンルを超えて、相互作用を生み出していってほしい」と語る。「人々が『Look Up Child』に共鳴してくれて、本当に感激だわ」

だが、アルバムの成功はもっと大きな事実を浮き彫りにしている。アメリカのオーディエンスの間でクリスチャンミュージックがいまだ根強い人気を誇っているという事実だ。ラップがアメリカの近代音楽唯一の起爆剤と言われるこのご時世、こうした音楽消費の一面は見逃されて来た。たしかに、ラップやR&Bは音楽消費の主流ジャンルに成り上がったが、クリスチャン・ミュージックもマイノリティながら、相当数のファンを抱えている。確実な数字を挙げるのは難しいが、2015年、ゴスペルミュージック協会が毎年恒例のカンファレンスで発表したデータによれば、アメリカ人の68%が1か月以内にクリスチャン・ミュージック、またはゴスペルミュージックを聴いているという。

60年代、クリスチャン・ロックの台頭とともに数多く出現したクリスチャン系ラジオ局は、その後も穏やかながら確実に成長を続けており、カントリーミュージック局やニュース局と並んでラジオ業界を独占している。ニューヨーカー誌でKelefa Sanneh氏が述べているように、2017年もっとも人気だったロックミュージック20曲のうち半数は、たとえ“クリスチャン・ミュージック”と銘打ってリリースしたわけでなくとも、「バンドメンバーがキリスト教の教えを信奉している」と言う。「いまや信仰は、ポップミュージックと縁遠いものではなくなってきている。我々の時代は、信心深いアーティストに限らず、大勢のミュージシャンが、啓蒙的なメッセージを発信しようとする時代なのだ」というのがSanneh氏の見解だ。

だが、『Look Up Child』のケースが特殊なのは、その影響力だ。過去数十年間主流を占めてきたジャンルが勢いを弱める中、アメリカの音楽ファンたちはますます、クリスチャンミュージックを心のよりどころにしている。

Translated by Akiko Kato

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