マック・ミラー最後のインタビュー「俺のことは心配いらない」

2018年夏、ローリングストーン誌の取材に応じてくれたマック・ミラー(Photo by Clarke Tolton for RollingStone.com)


フォトグラファーの母親と建築家の父を持ち、ピッツバーグで生まれ育ったマルコム・ジェームス・マコーミックは、幼い頃から自らのやり方を貫いてきたという。高校生の頃に自宅の地下室に籠り始める前から(母親はその対策として、地下室のドアに南京錠をかけていた)、彼は観た映画の続きを自作することを習慣にしていたという。「映画を観終えた後の数時間は、自分で勝手にストーリーの続きを考えて楽しんでた」彼は笑顔を浮かべてそう話す。「例えばバスケものの映画で、主役のいるチームが大会で優勝して終わったとしたら、近所のバスケコートに行って『彼はその後NBAでも大活躍した!』とか言いながらプレーしてた。『メン・イン・ブラック』なら、『彼らに新たな任務が与えられた!』みたいな感じさ」。

やがてミラーは自身のキャリアにおいて、それと同じことをするようになる。成功に甘んじることなく、より実験的で野心に満ちた作品を発表することで、自身のイメージを繰り返し更新してきた。『ブルー・スライド・パーク』で築いた「リュックを背負った近所の兄ちゃん」というイメージは、内省的で脆さを露呈した2013年の出世作『ウォッチング・ムービーズ・ウィズ・ザ・サウンド・オフ』で完全に払拭された。2016年作『ザ・ディヴァイン・フェミニン』、そして最新作『スイミング』においては、曲がヒットするかどうかよりも、自身の人生の一部を切り取ったかのようなリアリティと一貫性を意識したという。

『ムービーズ』『フェミニン』がそうであったように、ミラーは脚光を浴びることよりも、自身のクリエイティビティを優先させる。数ヶ月前まで彼がメディアの前に姿を見せなかったのは、『スイミング』の制作に専念するためだった。何ヶ月にも渡る試行錯誤の末に行き着いた結論は、一貫したコンセプトと具体的なサウンドの決定が先決ということだった。


Photo by Clarke Tolton for RollingStone.com

彼が目指したもの、それは「水のような質感」のサウンドと、汗ばむようなソウルとファンクのヴァイブだった。『スイミング』というタイトルには、そのコンセプトがストレートに反映されている。同作にはブラッド・オレンジのデヴ・ハインズ、ベーシストのスティーヴン・「サンダーキャット」・ブルーナー、そして「スモール・ワールズ」でトリッピーなジャズギターを披露しているジョン・メイヤーといった多様なゲストが参加しているが、アルバムに散りばめられたインプロビゼーションの断片からは、彼がそういったミュージシャンたちを必要とした理由を垣間見ることができる。

またミラーは今作で、フィオナ・アップルやカニエ・ウエストの作品で知られるマルチ奏者、ジョン・ブライオンをプロデューサーに迎えている。彼は収録曲の半数以上に携わっており、オルガンやビブラフォン等の楽器の演奏はもちろん、イメージ通りのパーカッションサウンドがなかなか得られず、午前6時に釣銭の入ったコインケースをシェイクしたこともあったという。スタジオ入りするまで彼の音楽にほとんど馴染みがなかったというブライオンについて、ミラーはこう話す。「彼が乗ってきた車はちょっとしたトラックで、ものすごい数の楽器が積まれてた。大半は1930年頃のものじゃないかと思う。彼は楽器の達人で、俺のあらゆるリクエストに答えてくれた」

Translated by Masaaki Yoshida

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