マック・ミラー最後のインタビュー「俺のことは心配いらない」

2018年夏、ローリングストーン誌の取材に応じてくれたマック・ミラー(Photo by Clarke Tolton for RollingStone.com)


チャートを制した2012年のデビュー作、『ブルー・サイド・パーク』の発表から数年間の間に、ミラーはプロメタジンやコカインに手を出したことを認めている。もうドラッグはやってないと主張しながらも、世間はそう思っていないことを彼は自覚している。「ドラッグ中毒者だと思われてたとしても、別に気にしないさ。そういうやつらに『いろいろと事情があるんだよ』なんて説いてまわる暇なんてないしな」彼はそう話す。「ドラッグをやったことがあるかと聞かれれば、答えはイエスだ。でも俺は依存症じゃない」。

それでもミラーは、飲酒運転の件による悪影響は痛感している。「あれで一気に世間のイメージを悪化させちまったからな」彼はそう話す。「あれは完全に俺の過失だし、言い逃れする気はない。でもその一件だけで、俺の人格まで否定するってのはどうなんだ?もちろん世間は、俺のそんな意見に耳を傾けたりしない。俺は過去にもスキャンダルを起こしてるし、ネガティブなイメージが付いて回るのは仕方ない。過去は変えられないからな。でも俺は、このまま黙ってるつもりはないぜ。俺は俺のやり方を貫くし、その結果どこに辿り着くのか、この目で見届けたいからな」。

ミラーにとって、メジャー3作目(通算5作目)となるアルバム『スイミング』のリリースは、その第一歩に他ならない。シンセサイザー、官能的なグルーヴ、そしてファンキーなフックに満ちた全13曲からなる同作は、リスナーを脳内トリップへと誘う。しかし今作において最も特筆すべき点は、数週間前まで自身を外界から隔絶していた彼が、うつ症状やパラノイアに悩まされながらも、自己受容という結論に辿り着くまでの過程が赤裸々に綴られている点だ。「堂々巡りを続けるこの頭 抜け出す方法を探してる」彼は「カム・バック・トゥ・ジ・アース」でそうラップする。また後半の「スモール・ワールズ」では、「踏ん張れって自分に言い聞かせてる / 指先の力が抜けていくのを感じる / 気を抜いた瞬間、俺はあの世行きだ」

自身の脆い一面を曝け出しながらも、現在の精神状態は良好だとミラーは主張する。毎朝トレーニングに励み(「運動することで脳内物質が刺激されて、気持ちを落ち着けられるんだ。そうやって1日を始めるのさ」)、アルバムのリリースが近づくと、極めて慎重な姿勢を見せつつもソーシャルメディアに復帰した。新作に対する好意的な反応には、彼自身大いに驚いているという。「その気になれば、そこから俺の本音を探ることだってできるはずさ」気まぐれ的に投稿している自身のツイッターとインスタグラムについて、彼はそう語っている。「昔の作品の方がいいっていう意見は少なくないよ。俺はラップだけやって歌うべきじゃないっていう奴もいれば、そのまったく逆を主張する奴らもいる。そういうのに耳を傾けても混乱するだけだ。アーティストは直感に従って、自分の信じることをやるべきなんだよ」

オッド・フューチャーの躍進を陰で支えたことでも知られるミラーのマネージャー、Christian Clancyは過去数カ月間に渡って、ミラーが外界と接触する機会を意図的に遠ざけていたと話す。「外野の声が耳に入らないようにすることは、アルバム制作の過程の一部だった」Clancyはそう話す。「はっきり言って苦労したよ」

蒸し暑い夏の午後、トレードマークといえる無地の白Tシャツに黒のショーツ姿でマンハッタンの街を歩くミラーの表情は、意外とも言えるほど穏やかだ。筆者と行動を共にした数時間の間、ヘアドレッサーで髪を切り(「過小評価されがちだけど、自分をリセットする上で極めて有効な方法」)、新しい白Tシャツの物色し、チームのメンバーをからかい、時折大きな笑い声を上げるミラーは生き生きとしていた。2015年頃に1年ほど住んでいたというこの街を、人目を気にすることなく堂々と歩くことに、彼は久しく味わっていない喜びを感じていたのかもしれない。

ミラーにとって、数々のストレスを忘れるための一番の処方箋は、自分のことを大切に思ってくれる人々と交流を持つことだという。「仲間たちやファンの愛情に触れることで、自分がくだらないことで悩んでたって気付かせてくれるんだよ」彼はそう話す。「最近はタブロイド紙に取り上げられすぎて、世間が自分のことをどう思おうが構わないことにしてた。どうせコントロールできないなら、気にしたって仕方ないからな」

Translated by Masaaki Yoshida

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