学校への賄賂は当たり前…タイ映画史上1位の作品に込められた教育システムへの疑問

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(©GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.)



ー監督の中でのテーマとしては今回、こういった社会問題を“暴く”というような意味合いも込めていたのでしょうか?

プーンピリヤ:そもそもは、若者向けでスパイやアクションの要素が入った娯楽映画を撮ろうというところからスタートしました。しかしタイの若者についてリサーチをしていくうち、教育システムの問題に気がついた。正確に言うと“思い出した”というか。僕が学生の頃からあった問題ですが、自分でもすっかり忘れていたのです。実際これはあってはならないことなのに、なぜタイのメディアやタイのアーティストはこのことを取り上げないのだろう、ともあらためて思いました。なので『バッド・ジーニアス』は、観ている最中にはハリウッドのブロックバスター映画のごとくハラハラドキドキ楽しめるけれども、鑑賞後、特に大人はタイの教育システムについても、考えてもらえればいいなと思います。もしかしたらそれが、タイの子ども達の未来を変えるかもしれないですし。

ープーンピリヤ監督ご自身はタイ国内の芸術系大学で修士号まで取られていらっしゃいますね。当時から、外国へ留学を希望する学生もとても多くいたのでしょうか? あるいはこの20年ほどで状況も大きく変わったのでしょうか?

プーンピリヤ:実際、海外留学をしたいと考える学生の数はかなり増加しているはずです。子どもに留学をさせられるようなお金を持った層もタイ国内に増えましたし、海外との連絡もしやすくなっている。留学をしやすい状況になってきたことは確かです。僕自身が子どもの頃は、相当な富裕層の家庭でないと留学はできませんでしたから。


ナタウット・プーンピリヤ監督

ー今回、脚本は監督ご自身が書き下ろされたそうですね。カンニングの細かい手法、たとえばピアノコードだったりバーコードを使う、という着想はどのように得たのですか?

プーンピリヤ:私と一緒に脚本を担当してくれたふたり(タニーダ・ハンタウィーワッタナー、ワスドーン・ピヤロンナ)とともに、3人ですごく考えて脚本を書きましたけども、方向性を決めるのも大変でした。ただ、最初から一番のテーマとしてあったのは“学生達のカンニングを扱う。そしてカンニングを楽しく見えるように描くにはどうすればよいか”ということ。そのためには、スパイ映画の要素を取り入れてみるのがよいのではないかという話をかなりしました。カンニングの方法は徹底的にリサーチしてから、オリジナルの方法を考えました。

ーピアノは日本でも習っている子が多く、映画に登場する「トルコ行進曲」「エリーゼのために」「メヌエット」のような楽曲はとても馴染み深く親近感を持ちやすい部分だと感じました。ああいうのは万国共通のものにしようという意図で入れたのでしょうか? あるいは、タイではピアノ、ここ20年くらいで習い事として人気になっていたりするのでしょうか?

プーンピリヤ:タイでピアノを習っている子どもは、日本ほどはいないと思いますね。習っている子はいるけれど、それほど人気の習い事ということではないです。あの曲を選んだ理由は、もちろんピアノのレッスンによく使う曲だからということと、もうひとつは音符がそれぞれ違うので指の動きがとても見やすく、どの曲がどの試験問題の答えであるかがわかりやすいから、でした。

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