追悼バート・レイノルズ 成功と転落に左右されない「気楽さ」の由来

80年代に入り、『ストローカーエース』や『レンタ・コップ』の大失敗でレイノルズのスター性は地に落ち、90年代に入る頃には生活に窮するようになり、破産宣告せざるを得ない状況に陥った。しかし、レイノルズは仕事を続け、『ブギーナイツ』での演技が高い評価を受けたことによって、ハリウッド俳優らしいカムバックを遂げたのである。しかし、実のところ、レイノルズはこの作品自体にもポール・トーマス・アンダーソン監督との仕事にも不満を持っていた。そのせいで、アンダーソン監督の次回作『マグノリア』の出演オファーを断り、自分が演じたいと思う役柄だけ、つまりアクション映画、コメディ作品、スリラー作品の出演だけを続けたのである。

ローリングストーン誌に掲載したレイノルズのキャリアを振り返る記事では、アクションスターとしての名声や度重なる失敗作への出演によって、彼の俳優としての能力や技術が曖昧になっていることを指摘していた(晩年のレイノルズはフロリダで演技指導者として自分の知識と演技への愛情を生徒たちに伝えていた)。そして2017年、アダム・リフキン監督作品『The Last Movie Star(原題)』に主演したレイノルズは、世間の映画好きや評論家たちに彼の演技の神髄をまざまざと見せつけたのである。この作品でレイノルズが演じていのは本質的に彼自身の人生だ。落ちこぼれた稀代の映画スター、オンラインデータベースIMDBページに連なる誤った判断の証拠、スタントのし過ぎでボロボロになった肉体などなど。

この映画について語っているニューヨーク・タイムズのインタビューで、この作品では厳粛に演じる必要もある一方でユーモアセンスも忘れてはいけなかったと、レイノルズが述べている。「思うに、私は少しばかりわんぱく小僧の部分を持っていないとダメじゃないのかな。だって、そうしないと、みんながっかりするだろう。私たちはほんの束の間、この世にいるだけだ。だったら楽しむに限るだろ? あまり気難しく考えないし、逆に真面目すぎる人ってちょっと病的な感じもする。フロリダに住んでいるのも気楽さが一番だからさ」と説明した。

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE