ナイキ「Just Do It」広告塔、コリン・キャパニックとNFLの戦い

キャパニックにはチャンスが与えられるべきであり、具体的には、NFLのロースターへの登録を認めるべきだ。NFLでの勤務経験もある熱狂的なファンから見ても、キャパニックをスターティングメンバー或いは控え選手として契約すれば今より良くなるチームを、10以上挙げられる。マイアミ・ドルフィンズ、ロサンゼルス・チャージャーズ、タンパベイ・バッカニアーズは間違いなくチーム力が向上する。シアトル・シーホークスも然り。シーホークスは、2018年4月のキャンプにキャパニックを参加させる予定だったが、彼が今後は片膝つきをしないと約束しなかったために見送られた。デンバー・ブロンコスも同様だ。同チームのゼネラルマネジャー、ジョン・エルウェイは図らずも、キャパニックが起こしたNFLの共謀を告発する裁判を後押しすることとなった。2018年8月、エルウェイはキャパニック側へ契約をオファーしたがキャパニック側が拒絶した、と主張していた。「コリンにうちのチームの一員になるチャンスがある、と言ったのは暫く前のことだ。チームは彼へ契約をオファーしたが、彼が受け入れなかった」とエルウェイは言う。エルウェイは、提示内容が市場価格を下回っていたことや、オファーの時期が2016年にキャパニックが片膝つきの抗議行動を起こす前だったことは敢えて伏せていた。

キャパニックがもし、前出のチームのいずれかと契約する機会を得られても、ロースター登録を認められていなかったら、どうだろう? 実戦から離れていたことで、彼が2012年シーズンで見せたようなダイナミックな動きは損なわれているのは間違いない。さらに、かつてのしなやかさや敏捷性も低下しているだろう。彼がトライアウトを受けて落ちたのであれば、彼の名前もニュースの見出しから消えていき、有色人種であるが故にリーグから差別を受けたと彼が主張することもなかっただろう。NFLで働く従業員の多数は有色人種であり、キャパニックは、米国でもどこでも有色人種が虐げられるべきでない、と考えている。それに対してNFLは、反動的な偏見やデマを放置することで、今日のキャパニックを作り上げたのだ。

キャパニックには天性の職業がある。それは広告塔でもなければ、人権活動家でもない。広告塔や人権活動家の仕事は、彼が本来持つ最高レベルのパフォーマンスを発揮できなくなったが故に、彼に与えられたものだ。彼の価値ある脳は彼が今していることに使うのが良い、と誰もが思うだろうが、それは我々が口を挟む問題ではない。ましてやトランプ大統領の決断でもない。彼の思うままにすれば良い。スポーツは恐らく我々の最後の完全実力主義の場だ、という幻想にこだわりたいなら、バッファロー・ビルズはキャパニックとすぐに契約し、ネイサン・ピーターマンを退けてレギュラーにさせるだろう。キャパニックが口を閉じてただパスを投げるだけの選手になるとは思わないが、きっと良い仕事をするに違いない。


Translated by Smokva Tokyo

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