英アビー・ロード・スタジオ大改革、リブランディングで若者世代を新規獲得

アビー・ロード・スタジオで演奏するノエル・ギャラガー


アビー・ロードとの関係をスタートさせて以来、彼自身も自分の音楽の幅を広げようと努力している。マーズとパークがスタジオに来たとき、レニー・クラヴィッツのサンプルを使いながら彼らと1曲レコーディングしたのだが、これはロジャースの人生で初の試みだったのである。また、三代テノールになぞらえたアイデアもある。これはロジャースを含む3人のギタリストが「典型的なギター・テクニック」を使ってプレイしたレコードを作るというもので、彼はその詳細をまだ秘めている。ただ、このスタジオでしか具現化できないものだと感じているらしい。「私たち3人がいつなら可能かを探らないといけない。彼らのスケジュール的に可能な時期を見つけないとね。でも、それをやるのはここアビー・ロードだと決めているんだ」とロジャース。「きっと魔法のようなことが現実に起こるはずだ」と。

「私たちが実現しようとしていることは、様々なタイプのアーティストがもっと使えるような環境と雰囲気を作ることだ」と、ロバートソンが言う。「これまで様々なスタイルの音楽を受け入れてきた。それこそ、グライム、ラップなど、アビー・ロードと直接結びつかないスタイルもある。新しいスタジオが小さめで、料金が手頃なこともあって、レコード契約をまだしていないアーティストも使うようになっているんだ。でも、小さくて安いと言ってもクオリティは同じだし、アビー・ロードらしい雰囲気のスタジオだ。例えば『スージー・スーが使ったマイクを使いたい』とか、『ジョン・レノンが使ったマイクを使いたい』と言ってくれれば、問題なく提供するよ」と。

内幕を少しだけ披露しながら、ロバートソンはアビー・ロードのアーティストたちとコラボレーションしてSNS発信を行っている。このスタジオ内部の様子が若いアーティストを惹きつけてもいるのだ。2017年9月以来、新しいスタジオをブッキングしたレコード契約のないアーティストが20人いる。そして、ロジャースが新たなことに挑戦したように、The 1975がノー・ロームをスタジオに招き、最近リリースされたコラボ・シングル「Narcissist(原題)」をレコーディングした。新しいスタジオはヒップホップ・アーティストやJD. ReidやDJ YodaといったDJたちも惹きつけている。

「今でもアビー・ロードはリバプール出身の例の4人が一番有名だ」とロバートソン。「でも、スタジオの門戸を広く開けたことは非常に楽しいことなんだ。Novelistは、子供の頃に彼の先生が言った『神話が存在するアビー・ロードにお前なんかが行けるはずがない』という言葉が間違っていたことを証明した。彼の先生のような認識を私たちは変えようと思っているんだ」と。

とはいえ、アビー・ロードでいくつものビートルズ・プロジェクトを行ったジャイルズ・マーティンのようなプロデューサーにとって、このスタジオは今でも最高の場所だし、自家用ジェットで飛び回るミュージシャンにとってもそうだし、ポール・マッカトニー自身も新作『Egypt Station』をアビー・ロードで作っている。一方、新しいスタジオは、そこを半永久的に自分のスタジオとして使いたいアーティストたちにとって理想の場所となっている。ノエル・ギャラガーなどは実際に検討中のようだ。「このスタジオが一流の人たちのレコーディングやオーケストラに必要とされているのは明らかだ」と、ロバートソンが説明する。「しかし、その一方で、もっと広い視野で様々なアーティストたちを受け入れることが可能なスタジオだとして認識している人たちも相当数いる」。

Novelistがアルバムをミックスしていたとき、彼の友人のDJ South Spiralが電話してきた。「俺は確か『今、東ロンドンにいる』って言ったと思う。そしたら彼が『ああ、俺はスタジオにいるぜ』と言ったんだ」と、Novelistがそのときを思い出して説明した。「俺は『お前のスタジオはどこ?』って聞いたら、彼が『アビー・ロードの裏さ』って。俺は『俺もその近所だぜ』って。そこで彼に会いにスタジオに行った。あれはクールだったよ」。Novelistは音楽の先生をスタジオに招くことも実行した。この先生は彼の才能を信じていた人で、彼はスタジオ内を案内してあげたという。「正直、あの先生がどう思ったのか、俺には分からないけど、とりあえずはリスペクトってことだよ、だろ?」とNovelist。

つまり、彼にとってアビー・ロードで作業を行うことが意味するものは“リスペクト”ということだ。一人で自宅で録音した音源を、アビー・ロードのエンジニアの助けを借りながらクリーンアップして、少しEQとコンプレッションを加えるだけで、Novelistは人生の目標を達成したというわけだ。「アビー・ロードで仕事ができたことはクールだったよ、だってあそこでレコーディングできたこと以上に、ちゃんと目標を達成できると自分自身にも証明できたんだから。そんなことを思うのは俺だけかもしれないけど、とにかく計画を諦めなかったってことだよ」と、Novelistは言った。

Translated by Miki Nakayama

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