英アビー・ロード・スタジオ大改革、リブランディングで若者世代を新規獲得

アビー・ロード・スタジオで演奏するノエル・ギャラガー


その目標を達成する方法の一つとして、2018年3月にナイル・ロジャースをアンバサダーに指名して、アーティストやプロデューサーに積極的に働きかけてもらうことにした。それ以前のロジャースはスタジオの空間オーディオ・フォーラムに参加しており、アンバサダーになってからはフロントルーム内にショップを作り、スタジオ・ツーから徒歩圏内の隣接したビル内にもう一つの新しいスタジオ、ゲートハウスを作った。その後、ロジャースはムラ・マサとナオをゲートハウスに連れて行き、「Till the World Fails」をレコーディングしたのである。この曲は近々リリースされるシックの新しいアルバムに収録されるディスコ風のニューシングルだ。また、ロジャースはブルーノ・マーズやアンダーソン・パークもアビー・ロードに招いて、新たな音楽の可能性にチャレンジした。

ロジャースが「神話の総本山」と呼ぶ良質のスタジオを彼自身も高く評価している。70年代、ロジャースはニューヨークのスタジオ、パワー・ステーションを有名にする手伝いをし、このスタジオでローリング・ストーンズやピンク・フロイドなどのアーティストたちがディスコを実験する様子を見ていた。そのときと同じようなバズをアビー・ロードの周辺でも起こしたいと思っているのだ。

「生まれてからこの方ずっと音楽を聞いてきて、『うわっ、彼らはこれをアビー・ロードで作ったんだ』と思うことがあった」とロジャース。「もちろん、この“彼ら”はビートルズのことだ。だから、スタジオのスタッフと話し合い始めたとき、彼らに言ったことは『私がここに関わったあとで、みんなが『マジか!彼らがこれをアビー・ロードで作ったってか!』となったらどうする?』だった。そしたら彼らが「それはどういう意味ですか?」って聞いてきたから、『“うわっ”と言わせる要因が“マジか”と言わせる要因に変わったらどうするかってことだよ』と答えた。つまり、ここで作った音楽を聞いた人たちが『マジかよ、あのアビー・ロードでこれを作ったのか?!』と言い出したらどうなんだろうかってね」。


2017年春にアビー・ロードのスタジオ・ツーでナイル・ロジャースと作業を行ったムラ・マサ

アドバイザーの役割を引き受けて以来、ロジャースはスタジオスタッフを「〜したらどうだろうか?」スタイルの質問攻めをしている。「これをやったらどうだろか?」「あれをやったらどうだろうか?」と。これを続けることで“マジか”要因に到達したいのだ。ロジャースにはシックのミュージックビデオをスタジオ・ツーで撮影するというアイデアがあって、そんなことをした人は一人もいないと教えられたという。彼がこのアイデアを実行したあと、ポール・マッカートニーがスタジオ・ツーでコンサートを行った。「連鎖反応だね」と、ロジャースのアドバイザー就任を個人的に祝ってくれたマッカートニーについてロジャースが言う。「彼があそこでコンサートをすることを以前考えたかは知らないけど、あれは魔法のような意見の合致だった」と。また、ロジャースはスタジオのエンジニアたちと手を組んで、アビー・ロード独自の特製録音機器についても学んだのである。「このスタジオにいると、自分が人類学者にでもなった気分だよ。壁際にはいくつもの機材が置かれていて、それらすべてに特別な歴史があるんだからね」とロジャース。

Translated by Miki Nakayama

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