サマソニLIVEレポ「中国発のヒップホップ新世代、ハイヤー・ブラザーズを目撃」

ハイヤー・ブラザーズ(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)

約束の時間に、彼らは現れなかった。8月19日(日)、サマーソニック東京二日目。15時20分からBillboard JAPAN STAGEでパフォーマンスを行う予定となっていたハイヤー・ブラザーズ(Higher Brothers)に、Rolling Stone Japanは取材を申し込んでいた。だが、当日指定の時間にプレスエリアでいくら待っても、いっこうに彼らは現れない。ついに時間いっぱいとなり、結局、日本メディア初となる対面取材は叶わなかった。

「チャイニーズ・ミーゴス」とも称されるハイヤー・ブラザーズは、MaSiWei(马思唯)、DZknow (丁震)、Psy.P(杨俊逸)、Melo(谢宇杰)の4人で構成された中国のヒップホップ・グループ。アジアの新しいポップ・カルチャーを発信する、ニューヨーク拠点の複合型メディア・プラットフォーム、88risingの中核を担っている気鋭のラッパー集団だ。彼らに先んじて欧米で知名度を獲得した韓国人ラッパー、キース・エイプと組んだ「WeChat」、シカゴ発の新鋭フェイマス・デックスをフィーチャーした「Made In China」等のシングル・ヒットをきっかけに、アジア、アメリカ、ヨーロッパで急激に注目を集め、今年2月には初めてのアメリカ・ツアーを敢行。88rising所属のメンバーが一同に会したコンピレーション・アルバム『Heads In Clouds』は全米チャートでも好成績を収め、9月からは88rising全体での大規模な北米ツアーを控えている。

ここ日本でもヒップホップ・リスナーを中心に大きな関心を集めているハイヤー・ブラザーズだが、彼らにまつわる情報はいまだ驚くほどに少ない。数少ない英語のインタビュー記事を参考にすると、彼らは四川省成都市を拠点とするラップ・コレクティヴ=说唱会馆 (Cheng-Du City Rap House、CDC)の中で結成され、4人で共同生活を送りながら楽曲を製作しているのだという。影響源としてはケンドリック・ラマー、ミーゴス、エイサップ・ロッキー、J・コール等の名前を挙げており、彼らが2010年代以降のUSヒップホップ隆盛に触発された新世代(おそらく20代前半)なのは間違いない。

では、情報の統制された中国で、ハイヤー・ブラザーズの4人はどのようにヒップホップと出会ったのか? 中国のドメスティックなヒップホップ・カルチャーはどのような歴史を経て今に至るのか? 現在、大きな潮流となりつつあるアジア圏ポップのグローバル化を彼らはどのように捉えているのか? 実際に会って聞きたい疑問は山ほどあった。ただ、予定していた取材を完遂できなかったことに、悔いはあっても恨みはない。そんな些末な思いなんて吹き飛ばすほどに、ステージに登場した彼らのパフォーマンスは素晴らしかった。

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