ボブ・ディラン、2018年のセットリストを大改造

「悲しみは果てしなく」は1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルで演奏して以来、ディランのセットリストのローテーションの中に入っていた曲だ。このフェスティバルで演奏した時点でこの曲は「Phantom Engineer」というタイトルだったが、『追憶のハイウェイ61』のレコーディング・セッション中にシャッフル部分を作り直し、ディランが作った最も素晴らしいブルース曲の一つへと生まれ変わったのだった(この曲はローリングストーン誌が選ぶ最高のディラン・ソング100曲の61位だ)。この曲の鳥肌もののバージョンが演奏されたのは1999年6月30日のマディソン・スクエア・ガーデンで、エリック・クラプトンが開催したクロスローズ・ベネフィットのコンサートでクラプトンと共に7曲演奏したときだ。このコンサートはカリブに浮かぶアンティグア島にクラプトンが作ったリハビリセンターの寄付金を募るために行われたものである。彼らはこの曲をアップビートでスウィングする曲にアレンジし、楽しさを隠さずに演奏した。クラプトンが花火のようなギターを解放するそばで、ディランが奏でる大雑把で空間の多いリズミックなリードは魅惑的以外の何物でもない。

ディランの最近のセットリストの大改造が示すのは、演奏するディランは今でも忙しく生まれ変わっているということだろう。「曲はレコーディング・スタジオ内では活気づかない」と、2012年のローリングストーン誌のインタビューでマイケル・ギルモアを相手にディランが語っていた。「最善は尽くすよ。でも、いつも必ず何かが足りない。その足りないものがライブ会場の観客なんだよ」と。また、セットリスト大改造というこの動きは、10月4日のアリゾナ州フェニックスからスタートするディランの全米ツアーでの嬉しい可能性を示すものでもある。つまり、アメリカの観客も、今回の海外ツアーで披露されたディランのクラシック曲を久しぶりに聞く機会に恵まれるかもしれないのだ。とはいえ、彼がファンの期待に逆らって、ここ数年続けていた固定セットリストに戻る可能性も捨てきれない。現時点で言えることは、私たちがどんなふうに思っていても、ディランはお構いなしということだ。



今回のニュージーランドでのライブの前に彼が最後に「ライク・ア・ローリング・ストーン」を演奏したのが、この2016年のデザート・トリップだ。


Translated by Miki Nakayama

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