サマソニLIVEレポ「9年ぶりの登場、理想的な成長を遂げたパラモア」

また、パーカッションを増員したアフリカン・ビートや、カラフルで縦横無尽なアンサンブルには今年のフジロック・フェスティバルで味わったヴァンパイア・ウィークエンドのステージ……つまり、「トーキング・ヘッズ的な凄み」を感じたりもしたが、ジャケットを脱ぎ捨てたヘイリーのTシャツはまさかのトーキング・ヘッズ(日本滞在中のプライベートでは『リメイン・イン・ライト』のプリントTも着ていたとか)。ベックとも親交の深いジャスティン・メルダル・ジョンセンと共同プロデュースを努めたテイラーは、『アフター・ラフター』の制作にあたってトーキング・ヘッズ、ポール・サイモン、バングルスといったラジオ・フレンドリーなロック/ポップスにインスピレーションを受けたと言うが、開演前のSEでもポール・サイモンの「You Can Call Me Al」(小沢健二「ぼくらが旅に出る理由」の元ネタ)や、ストロークスの「Someday」(パラモアは以前この曲をカバーしている)が流されていたし、そんな「リファレンスのわかりやすさ」もプレイリスト全盛の現代においては大正解だ。

トーキング・ヘッズというよりはトム・トム・クラブ風の軽快なリフが刻まれる「Caught in the Middle」を演奏すると、MCで前回のサマソニ出演について触れつつ「みんながパラモアを聴きながら成長したのと同じように、私たちも一緒に成長した。17歳のときに書いた曲は……正直、今では共感できなくなっているんだけど、みんなのために歌うわ!」と告げて、ひとりの男を奪い合った体験を赤裸々に綴ったヒット曲「Misery Business」をプレイ。ひときわラウドなバンド・サウンドに乗せてサビのほとんどをオーディエンスに歌わせたヘイリーは、2月の単独公演と同じく間奏でファンの1人をステージに招きマイクを渡すのだが、クリスティーナと名乗るその女性客がプロ顔負けの声量でパワフルに歌い上げると場内は騒然、ヘイリーも目を丸くして「パーフェクト!」と驚いていたのが印象的だった。

ライブは後半戦へと突入し、グラミーで最優秀ロックソング賞に輝いた「Ain’t It Fun」、ハイムを彷彿とさせるトロピカルな「Told You So」に続いて、ザックをフロントに呼び寄せて彼のソロ・プロジェクト=ハーフノイズの「All That Love Is」をセルフ・カバー。ここではコーラスやパーカッションに徹していたヘイリー、『アフター・ラフター』のツアーでほぼ毎晩この曲を演奏しているのは、7年ぶりにバンドへ復帰した彼に対するプレゼントなのだろう。その後はヘイリーによるリングアナばりの大仰なメンバー紹介と、フロア一丸となっての「ウィー・アー・パラモア!!」を合図に、シロフォンの音色が高揚感をもたらす「Hard Times」で大団円。サビでブロンディの「Heart of Glass」をさらっとマッシュアップしていたヘイリーだが、もしかすると彼女は2010年代のデボラ・ハリーなのかもしれないし、しょげかえったロック・バンドのタマを蹴り上げる救世主なのかもしれない。

どこまでも自由で、大胆不敵。ジュリアン・ベイカーやソフィー・アリソン(サッカー・マミー)、あるいはリンジー・ジョーダン(スネイル・メイル)といった若き女性シンガー・ソングライターたちが、声を揃えて「パラモアに人生を変えられた」と語る理由が、この日のパフォーマンスを見てわかったような気がする。



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