サマソニLIVEレポ「最強カードを次々に繰り出したベックの余裕」

ベック(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)

こんなに過ごしやすいMARINE STAGEって、今まであっただろうか。常に炎天下か、土砂降りの雨に見舞われる記憶しかないのだが、昨日に引き続き今夜も海風が心地よく吹いている。今年のサマソニ東京の大トリ(8月19日)を務めるのはベック。なんと、17年ぶり2回目のヘッドライナーだ。

朋友ジェイソン・フォークナーやロジャー・マニングJr.らを引き連れ、ほぼ定刻通りに登場。ラメの入った黒いジャケットを身に纏い、黄色いレスポールJr.を抱えたベックがジミヘンばりのギターソロをいきなり披露。すると4つ打ちのキックが鳴り響き、「Devils Haircut」のギターリフへと雪崩れ込んでいく。いつになく荒々しくハードコアな演奏に面食らっていると、畳み掛けるように「Loser」へ。ジェイソンと共に織りなすギターアンサンブルはサイケデリックで、これまたいつものアレンジに比べてアグレッシヴだ。もちろん、サビではベックがオーディエンスにマイクを向けるまでもなく、自然発生的にシンガロングが湧き上がる。始まってまだ10分も経っていないのに、この一体感はどうだろう。というより、アタマ2曲で立て続けに神曲をぶち込んでも、まだまだ手持ちのカードが山ほどあるのがベックのベックたる所以だ。

ムーディなサックス・ソロからの「The New Pollution」、テンポをグッと上げ、つんのめるようなシンコペーションでグイグイと進む「Mixed Bizness」と初期のアンセムを披露し、最新アルバム『カラーズ』のニューロマンティックな表題曲と、スペイシーかつストレンジな楽曲「Wow」にバトンタッチ。「オルタナティヴ・ロックのパイオニア」として、90年代のUSシーンを切り拓いていた時代の楽曲たちと、「グラミー賞アーティスト」として円熟期を迎えた近年の楽曲たちが、こうして同じセットリストの中で並んでいても全く違和感がなく、むしろ新曲も往年の名曲と同じようにファンに熱狂的に迎えられているのが本当に頼もしい。しかも、こうしてライブをやるたびにアレンジをマイナーチェンジさせ、毎回新たな驚きをもたらしてくれるところに、彼のエンターテイナーとしての矜持を感じさせるのである。

華やかな照明が印象的な「Sexx Laws」、ハードロック的なアレンジの「Black Tambourine」など、中盤もダレることなく突っ走り、90年代グランジをアップデートしたような「I’m So Free」では、サビでモッシュが巻き起こった。さらに歯切れの良いエレキギターや、ベックのファルセット・ヴォイスがファンキーかつ官能的な「Dream」では、マリンスタジアムがダンスフロアに様変わり。そして「Up All Night」では、配信限定のリミックス・ヴァージョンでコラボレートしたDAOKOがゲストで登場し、キュートなラップを披露。ガチガチに緊張していたようだが、ベックに支えられながら見事に大役を果たした。

「E-Pro」を披露し本編は終了。アンコールの「Where It’s At」では、恒例のメンバー紹介&名曲カバー大会が繰り広げられる。ロジャー・マニングの時は、なんとニュー・オーダーの「Blue Monday」を演奏し、コアなオールドファンを感涙させる。そして再び楽曲に戻って大円団を迎えた。

半月が浮かぶ夜空に、無数の花火が打ち上がる。最初から最後までアンセム級の名曲が並ぶパーティ仕様のセットリストは、サマソニの大トリを飾るに相応しいものだった。



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