ミュージシャンはどのように稼いでいるか? 複雑化する著作権ビジネス

ミュージシャンにとって最も儲かる場として急速に発展しているライヴ事業(Photo by Shutterstock)

最近の調査によると、アメリカのミュージシャンは、国内音楽業界の売上全体の10分の1しか得られていないという。音楽業界でいう“ロイヤリティ”にはいったい何が含まれているのか?ストリーミング時代に突入し、より複雑化された著作権のシステムについてローリングストーン誌が解説。

創作作品としての楽曲やアルバムの所有権である“著作権”は、音楽業界におけるルールやプロセスを難解にする元凶で、一般のファンが思うよりずっと多くのミュージシャンたちが問題に巻き込まれている。音楽近代化法(MMA)が米国議会で成立間近な一方で、有名ソングライター同士の盗用を巡る争いが巻き起こり、またウォール街は、公開会社としてのスポティファイの収益性の欠如を精査している。米音楽業界のファイナンス・システムに関する基本知識を持っておくことは、将来を見通す上で役立つだろう。

まず“ロイヤリティ”とは、作品が販売・流通、或いはさまざまなメディアで利用されたり、さまざまな方法で収益化された時に、権利保有者に対して支払われるものだ。以下に、デジタル時代においてミュージシャン、ソングライター、プロデューサーらがロイヤリティを手にする現実の方法を、ローリングストーン誌が解説する。

作曲とレコーディング

音楽リスナーにとって、楽曲はあくまでもひとつの曲でしかない。しかし音楽ビジネスにおいて、ひとつの楽曲は“作詞・作曲”と“サウンド・レコーディング”という2つの独立した権利に分けられる。

まずは後者の“サウンド・レコーディング”から見ていこう。サウンド・レコーディングの著作権は、レコーディングしたアーティストとレコード・レーベルが保有する。ロイヤリティの発生するレコーディング・ライセンスにはさまざまな種類があり、例えばパフォーマンス権(ストリーミング・サービス、AM/FMラジオ、衛星ラジオ、インターネット・ラジオ等を通じた楽曲の再生)、リプロダクション権(CDやデジタル音楽ファイルの販売のための複製)、シンクロ権(映画、テレビ番組、その他メディアにおける楽曲の使用)などに細分化される。しかしほとんどの場合、重要なのは、この権利はアーティストとその背後にいるレーベルのみに帰属するという点だ。

楽曲を作詞・作曲して作詞・作曲権を保有する人たちと、アーティストやレーベルとが関係のない場合もある。それらが同一人物というラッキーな場合は、キャッシュフローがダブルになる。しかし、ほとんどのポップソングやチャート上位のヒットソングの場合、サウンド・レコーディングの著作権はアーティストとレコード・レーベルとで共有される。さらに作詞・作曲の著作権は、関係するソングライターとパブリッシャーが共有する。例えば、カウンティング・クロウズによる『ビッグ・イエロー・タクシー』のカヴァーバージョンの場合、バンドがサウンド・レコーディングのロイヤリティを得るが、作詞・作曲権のロイヤリティは、オリジナル楽曲の作詞・作曲者であるジョニ・ミッチェルに支払われる。

ある楽曲が聴かれる時にはほとんどの場合、サウンド・レコーディングと作詞・作曲の両著作権に対するロイヤリティが発生し、関係者に支払われる。以下の図は、Citiグループの調査チームによる音楽業界のファイナンスに関するレポートからまとめられたもので、サウンド・レコーディングと作詞・作曲の両著作権がどのように発生し、支払われるかを簡単に図解している。



Translated by Smokva Tokyo

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