アレサ・フランクリン死去 RS誌が選ぶ「歴史上最も偉大なシンガー」評を全訳

16日に亡くなったアレサ・フランクリン(Photo by Paul Natkin/Getty Images)

ローリングストーンが選ぶ「歴史上最も偉大なシンガー100人」第1位がアレサ・フランクリンだった。ここでは2010年の記事掲載時のアレサの評を抜粋して掲載。R&B歌手、メアリー・J. ブライジの言葉で構成されたテキストをお届けする。

歴史上最も偉大なシンガー100人:第1位 アレサ・フランクリン
生年月日:1942年3月25日
代表曲:「ナチュラル・ウーマン」「リスペクト」「貴方だけを愛して」「シンク」「チェイン・オブ・フールズ」
影響を与えたアーティスト:ホイットニー・ヒューストン、アリシア・キーズ、アーロン・ネヴィル、アニー・レノックス

天の力は偉大だ。神の創造したものも偉大だ。アレサ・フランクリンはまさに神からの賜物といえる。楽曲を通じて自分自身を表現しようとするとき、彼女に敵う者はいない。世の女性たちは、彼女に憧れて歌うのだ。

パワー、テクニック、アレサは全てを兼ね備えている。「チェイン・オブ・フールズ」や「リスペクト」などの代表曲からライブ・パフォーマンスに至るまで、彼女は発する言葉全てに正直に向き合い、彼女の想いや向き合うもの全てが音楽に込められている。彼女は自信家でもあり、信念がぐらつくことは決してない。彼女の原点でもあるゴスペルが、彼女の自信を築き上げたのだろう。ゴスペルはラン(フェイク)のような高い技術が必要とされる。アレサにとってゴスペルはお遊びではないのだ。

私の幼少時代、母が毎日のようにかける「恋のおしえ」や「エイント・ノー・ウェイ」を聴いて育った。アレサの曲を聴きながら涙する母を見て、私もつられて泣いたものだ。私自身がアレサを意識したのは、映画『スパークル』のサウンドトラックだった。「Giving Him Something He Can Feel」を何十回も繰り返し聴くうちに、私の頭の中にある母が聴いていた声と記憶の点と点が結びついた。

アレサの言葉の表現力も素晴らしい。「Giving Him Something He Can Feel」では、「Many say that I’m too young」と歌う彼女が、“I’m(私は)”と自分に直接語りかけてくるような感覚に陥る。「エイント・ノー・ウェイ」の「You’re tying both of my hands」の部分では、彼女の両手が目に浮かぶ。“both(両方の)”という言葉の力を込めた歌い方によるものだと思う。

彼女の歌う姿を観ると、彼女がなぜアレサであるかがよく分かる。私のアルバム『メアリー』に収録された「Don’t Waste Your Time」でアレサと共演したとき、彼女の存在感がパックマンのようにアルバム全体を食べ尽くしてしまった。彼女は、教会での歌唱をまるでジャズのように変えてしまう。そんな歌い方はそれまで聴いたことがなかった。「一体どうやったらそう歌えるのか? その声はどこから出ているの?」と聞いてみたくなる。

私のように、自分の才能に自信を持てない人にとって、彼女の歌は素晴らしい支えとなってくれる。彼女の歌う姿を見ていると「私もアレサの爪の垢を煎じて飲みたい」という気分になるのだ。

メアリー・J. ブライジ



Translated by Smokva Tokyo

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