D.A.N.の今を知るための7つのキーワード「脳内麻薬が出るような音楽を作り続けたい」

キーワード5:ギターとシンセ

─今作は、以前に比べてギターのサウンドが後退し、シンセがフィーチャーされているように感じました。そのあたりの変化は?

櫻木:まず、仁也がベースでやることのレンジをかなり広げてくれていて。聴いた人が「これはギターの音だな」と思っているのは大抵、仁也のベースだったりするんですよ。だから、僕もギター以外のアプローチをしやすくなったという部分があって。電子音や、それこそヴォーカルにもっとフォーカスできるようになったんですよね。そこは大きな変化だと思います。

川上:未だに大悟のギターは好きですけどね。決してうまくはないんだけど、彼にしか出せない味があって。

─僕もそう思います。ライブとか最高ですよね。

櫻木:ありがとうございます。実はずっと変則チューニングで弾いているんですけど、もうレギュラーチューニングでは弾けなくなってしまって(笑)。それでどんどん、オンリーワンなギタープレイになっている気がします。と同時に、どんどん下手になってる。もうFコードとか押さえられないかもしれないです(笑)。

─シンセが楽しくなっているところもありますか?

櫻木:それもあります。今回、特によく使ったのはデイヴ・スミス・インストゥルメントProphet Rev2。このアルバムを作るのと同時期に購入して、結構使いました。太くて良い音がするので、音数が少なくても存在感があるんですよ。シンセは変幻自在というか、どんな音も作れるところが楽しいし、曲作りにも大きな影響を与えていると思います。やっぱり、最初に触った楽器からのインスピレーションというのは大きいので。手元にどんな楽器があるかはかなり重要ですよね。と言いつつ、次のアルバムではギターだけになったりして……それはさすがにないか(笑)。

キーワード6:安心と不安

─歌詞についてもお聞きしたいのですが、今作には「安心」や「不安」という言葉がよく出てくるなと思ったんですよ。「Replica」の“安心を買いたい”、「Sundance」の“狂おしいほど不安”、「Borderland」の“安心は大概 簡単ではない”など。櫻木さんの中で、結構大きなテーマなのかなと。

櫻木:「安心」や「不安」について歌ったことは、今までにもあって。たとえば「Ghana」にも、“安心なライオンの背中に 跨り乗って”という歌詞が出てきますし。確かに僕の歌詞に一貫してあるエッセンスなのかなと思います。「安心」と「不安」は、いわば「生きること」「死ぬこと」とも置き換えられるかもしれないし、そういう対比を観察したり見つめたりすることが、自分のスタイルだと思います。漠然とした不安みたいなものを、ものすごく感じるときもあれば、まったく感じないときもあって、それは誰しもそうなんじゃないかなとも思うし。

市川:みんなあるよね。僕自身は、いいことが起きている時が一番不安なんです。「この先何か起こるんじゃないか?」という漠然とした不安を感じやすい。でも、実際に目の前で悪いことが起きているときは、安心なわけではないけど、不安は感じないんですよ。不安が明確に見えているからこそ、漠然とした不安はないというか。「Borderland」の歌詞の最後の方で、“Bad Timing Baby”“Good Timing Homie”って出てくるところは、そういうことを言っているのかなと。

櫻木:うん、「Borderland」は確かにそうかもね。冒頭でも話した死生観というか。僕は何かを主張してアジテーションするようなメッセージソング的な歌詞は書かない。そうじゃなくて、人の共感覚みたいなものに寄り添う歌詞や歌を作ることが、僕の役割なのかなって、今話しながら思いました。そういう部分で、「安心」や「不安」というワードがよく出てくるのでしょうね。

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