トランプ政権下の分断社会にスパイク・リー監督が提言、新作『BlacKkKlansman』に込めた思いを語る

カンヌ国際映画祭のグランプリを受賞した新作『BlacKkKlansman(原題)』への思いを語ったスパイク・リー監督(Photo by Mamadi Doumbouya)


―ジョーダン・ピールと彼の共同プロデューサーが『BlacKkKlansman』の脚本を持ってアプローチしてきたようですが、あなたの手によって加えられた要素はどんなものですか?

彼らはロン・ストールワースの本を獲得したけど、もう少しハッキリとしたキャラクターやスタイルが必要だと思った。それを私が加えたというわけだ。ストールワースを知らなかった自分にとって、この機会は本当にありがたいものだった。彼の話を知らなかったんだよ。みんな「あの話は驚異的すぎて現実と思えないほどだ」と言う。だからこそ、本当に素晴らしいストーリーの作品になっているんだよ。

―ストールワースがクランズマンを騙すために電話で話すときに使う「白人の声」について教えてもらえませんか? 演技やパフォーマンスに人種が関係するとしたらどんな感じですか?

いや、それって、黒人がいつもやっていることだよ! ロンが脚本に目を通すためにやって来たとき、私が彼にした最初の質問が例の声についてだった。彼は「スパイク、彼らは疑いもしなかった」って(笑)。彼はクランたちが黒人と白人の声の違いを聞き分けられなかったって言ったのさ。

―ストールワースを演じているジョン・デヴィッド・ワシントンはデンゼル・ワシントンの息子です。彼の中に父親の面影は見えましたか?

ジョン・デヴィッドはこの作品の中で最高の演技をしている。ことわざに「狐の子は面白」というのがあるだろう。みんながそう言うには理由があるってことだよ。彼はデンゼルの長男だ。彼にとってこれは大きな、大きな重荷だよ。でも、デンゼルは彼の親父でもある。ジョン・デヴィッドとは長い歴史があって、彼が最初に登場した映画が『マルコムX』なんだ。この映画の最後で、子どもたちが「俺の名前はマルコムXだ!」と言う場面がある。その子供の一人がジョン・デヴィッドだった。当時6歳くらいだったよ。

―今年のカンヌ国際映画祭は『ドゥ・ザ・ライト・シング』で行ったときとは異なる体験でしたよね。やっと世界的に認められたと思いますか?

あの当時、時代は『ドゥ・ザ・ライト・シング』を支持していたと思う。人は忘れるんだよ。『ドゥ・ザ・ライト・シング』はアカデミー作品賞にすらノミネートされていなかったんだよ。あの年の最優秀作品賞は『ドライビング Miss デイジー』だった。今、あの映画を見る人なんているか?

―エイヴァ・デューヴァネイが撮ったトロフィーを持ったあなたの写真を見たのですが、これまで見たことがないくらい誇らし気に見えました。

君は2016年のアカデミー名誉賞のオスカーを持っている写真を見ていないんだね(笑)。私は映画に関わったすべての人たちのために嬉しかった。家族、俳優たち、みんなのためにね。あれは本当に最高の瞬間だった。最後にスタンディングオベーションまであったよね? あれは本当にシュールだったよ。10分以上続いたから。あの瞬間を思い返せないくらい、あのときは高揚してボーッとなっていた。本当に素晴らしかった。映画製作者として、観客からどんな反応があると満足するのかを知っている。つまり、今はみんな『クルックリン』を大好きだ。でも最初に公開したときは嫌われた。『Bambooz;led(原題)』も、『ラストゲーム』も、私は全部支持している。人々が理解できる映画を作ってきたってことだね。でも、映画を公開したときにヒット作を出すって点ではどうだろう?

―他のアーティストたち、例えばピール、デューヴァネイ、バリー・ジェンキンスだけでなく、思想家や活動家たちにあなたの作品が与えた影響はどんなものだと思いますか?

その答えは私には難しいよ。確かなことは、私の映画が文化に影響を与えたってことだ。今でもよく言われるのが、『スクール・ディズ』を見ていなかったら黒人学校に行かなかったって言葉だ。私がこの世を去っても自分の作品が長い間語り継がれる確信はある。それだけで十分だよ。だって自分の人生が人に影響を与えたってことだから。それもポジティブな方向にね。

―人々に与えた影響をじっくり考えることはありますか?

ないね。ロサンゼルスで『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット・オール』を初めて公開したときのことを覚えている。上映後、ジョン・シングルトンという若い映画製作者が近づいてきて、「あなたのような映画を作ります」と言った。そして彼はその言葉通りに作った。

―5年後の『ボーイズ‘ン・ザ・フッド』ですね。

ほら、つまり……自分でも気付いているんだけど、これは日常的に考えるようなことではないわけだ。自分のことで手一杯だから。

―Netflixで『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット・オール』を再考してシリーズにしましたよね。最近の文化傾向として、女性のエンパワーメント、人間関係・恋愛関係、さまざまな虐待に世間が注目していると思います。そういう現実が『シーズ・ガッタ〜』をもう一度やろうと思うきっかけに影響しましたか?

このシリーズをやろうと思うきっかけとなったのが妻だ。強い女性の視点というのが確実にあるし、かつてはそれが故意に存在していた。今では脚本家の75%が女性だし、女性の意見を大多数の意見と決める意図が存在している。すべての脚本が有色人種だ。彼女たち全員がね。

―このシリーズもシーズン2に突入します。

素晴らしい反応を得ていることに、とても満足しているよ。映画製作者としては、自分が作った最初の作品に舞い戻ることなんて想像すらしなかった。しかし、気に入っている点は、人々が1986年に気に入った映画をこの時代になって再発見していることと、1986年生まれのこの映画のことなど知らない世代も見ていること、つまり複数の世代が見ているってことだ。

―カンヌでは審査委員長であるケイト・ブランシェットが『BlacKkKlansman』を「典型的なアメリカの危機」と述べましたが……。

でも、ほら、大事なことは、彼女は素晴らしい女優だってこと。カンヌのあとで彼女に一緒に仕事をしたいって伝えたよ。ケイトや他の審査員たちが見落としたことは……パルム・ドール(グランプリ)をもらったからこれを言うわけじゃないけど……この問題はアメリカ国内だけの問題じゃないってことだ。ヨーロッパでも起きている。イギリス、フランス、イタリア、ドイツではネオ・ナチが台頭しているだろう。みんなにそれを理解してほしいんだよ。右翼の台頭、ファシスト・グループの出現はアメリカだけの出来事じゃない。
あ、ケイトとは相変わらず一緒に仕事をしたいよ。ケイト、怒らないでね!

Translated by Miki Nakayama

RECOMMENDEDおすすめの記事


Current ISSUE

RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事