「日本3大音楽フェス」関係者だけが知っている歴代ベストシーン:ROCK IN JAPAN FESTIVAL編

「おそらく僕の役目は、『フェスっぽくない写真』を撮ることなのだと思います。構図もピントもカッチリ整った記録写真というよりは、もっとガチャガチャっとした、ライブハウスで撮っているような、普段の僕のテンションでGRASSを撮るという。いい意味での違和感が求められているような気がします」

実際、オフィシャルカメラマンの1日というのは、どのようなスケジュールなのだろうか。

「アタマ3曲は、ウェブサイトにアップするクイックレポート用としての写真、それ以降は本誌用として、各々のカメラマンっぽい写真の2パターンを求められています。昨年くらいからは、クイックレポートを写真のみで構成するようになったんです。すなわち、押さえるべき写真の点数も増えるわけですよね。例えば、それまでならヴォーカルをアップで撮った写真が1枚、バンド全体が写っている写真が1、2枚あれば良かったけど、今は全メンバーのソロカット、引きと寄りの写真という具合にバリエーションが必要になった。ソロアーティストもいれば、大所帯のバンドもいるわけで、それをアタマ3曲で撮らなきゃならないから結構大変です(笑)」


「2011年という年のRIJFは印象的だった」と語る橋本。大トリのBRAHMANは必然だったと振り返る。

「カメラマンは体力勝負」とはよく聞くが、想像以上にハードである。アーティストごとにまったく異なる演出。それを、どのように撮影するのがベストかを瞬時に判断し、限られた時間の中でベストショットを確実に押さえておく。しかも炎天下の中で、激しく動き回りながら。


ツアーなどにも帯同しているONE OK ROCK。GRASS STAGEでのアクトは荘厳。

「ライブの間の転換時間も、年を重ねるごとにどんどん短くなってきています。中でもGRASS STAGEが一番短いんですよ。20分か、せいぜい25分……スタッフ頑張りすぎでしょう!(笑)

その間にデータを全てコンピューターに落とし、メモリを初期化しカメラを掃除したらまたフォトピットへ戻る。しかも、毎回ウソみたいに晴れるから、暑さで死にそうになる。撮影のスキル云々より、体力あるかどうかのほうが大切かもしれないですね。ゴハンですか? 食べるとボーッとしちゃうので食べません。ウィダーインゼリーを流し込んだり、塩を舐めたり(笑)。アスリートと変わらないですよね。なので最近は毎日5キロ、サウナスーツ着て走り込んでいますよ」

さて、そんな橋本がこれまで撮影してきた中で、特に印象に残ったアクトを聞いてみた。

「真っ先に思いつくのはthe HIATUS。彼らのステージの後半、ROCK IN JAPAN FESTIVALにしては珍しく土砂降りになったんですよ。しかも笑っちゃうくらい。僕は、雨が降るとシャッタースピードをものすごく上げて取りたくなるんですね。そうすると、雨粒がピタッと止まったような写真が撮れる。しかもそのときは、ステージの後ろから照明が当たり、雨がキラキラ光ってまるで演出の一つのような写真が撮れたんですよね」


雨粒が光るthe HIATUS。一時だけ降った雨の瞬間を見事に切り取ったショット。

学生の頃から観ていたTHE YELLOW MONKEYの撮影も、鮮烈に覚えているという。

「確か“LOVE LOVE SHOW”の時だったと思うんですが、フロントの3人がステージの縁にグワッと集まって、肩を組みながら歌っているタイミングで撮った写真があるんですが、ああいうときはやっぱり『ああ俺は今、歴史的瞬間を撮っているんだな』って思う。それと、この時はちょうど吉井(和哉/ヴォーカル)さんの足の間に菊地(英二/ドラム)さんも入って、4人全員を収めることができた。『やった!』って思いましたね」

最後に、ROCK IN JAPAN FESTIVAL全体の印象を聞いた。

「異常ですよね、いい意味で(笑)。あんなに広大で、都心からも近く自然もあって、その上恐ろしいくらいホスピタリティが充実している。それってロッキング・オンの人たちの、お客さんに対するケアがハンパないからなんですよね。とんでもないフェスだと思います」


復活に歓喜の渦が巻き起こったTHE YELLOW MONKEY。まさに歴史的瞬間。


橋本塁
カメラマン。北海道出身。24歳の時ジーンズのパタンナーから突如カメラマンに転身し、雑誌『ollie magazine』の社員カメラマンを経て独立。HAWAIIAN6、ONE OK ROCK、MAN WITH A MISSIONなどをはじめ多くのアーティストのライブ写真を撮り続ける。DOTブランド『STINGRAY』のプロデューサーも務める。
http://www.ruihashimoto.com/

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