フジロック現地レポ「スーパーオーガニズム、視覚化された現代のサイケデリア」

7月28日(土)、フジロック2日目のレッドマーキーに出演したスーパーオーガニズム(Photo by Shuya Nakano)

さながら通勤ラッシュ時の山手線のような、すし詰めのレッドマーキー。定刻を回る前から、すでにフロアのあちこちで怒濤のような声援が飛び交っている。これから登場する総勢8名の多国籍バンド、スーパーオーガニズムへの期待値が、もはや尋常ではないほど高まっているのを象徴するかのようだ。

バックスクリーンに地球や星雲・星団、アフリカの大自然など、ネイチャー&サイエンスな写真がコラージュのように映し出される中、鈴を降りながらメンバーが現れる。おもむろに楽器をセッティングしていると、スクリーンはスペースシャトルの映像に。言うまでもなく離陸のカウントダウンを演奏のスタートとシンクロさせており、焦らしに焦らされたオーディエンスの熱狂は、この時点で早くも最高潮に達した。

満を辞してのライヴは「It’s All Good」からスタート。ヴォーカルのオロノは18歳の日本人女性で、カタコトの日本語を使って「アリガトー」とか「メチャアツイ!」、「スゴイ、サイコー!」などと言ったかと思えば、流暢な英語を駆使してオーディエンスを煽る。途中、「ワタシハ日本人ジャナイ」なんて言っていたけど、それもどこまで本当か分からない(そもそも、日本語がカタコトなのも、パフォーマンスかも知れない)。そんな謎めいたプロフィールと、小柄ながら堂々としたヴォーカル・スタイル、時おり覗かせるあどけない表情など様々な要素がミックスされて、すでにカリスマティックな雰囲気さえ漂わせている。フェイスペイントした彼女が次第にオーディエンスを掌握していく様子は、まるで群衆を前に祈祷する巫女のようだった。


Photo by Shuya Nakano

どこか60年代ポップ・ミュージックを思わせるメロディや、ラフなサンプリングが味わい深い「Nobody Cares」、コズミックなシンセと浮遊感あふれるメロディが印象的な「Night Time」など、彼らのデビューアルバム『Superorganism』からの楽曲で構成されたセットリスト。とにかく彼女たちは、メロディ・センスが抜群にいい。例えば「Reflections On The Screen」という曲に顕著だが、コード展開やそこに乗せるメロディの響き、ギターのトレモロアーム奏法(マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズが編み出した、時空を歪ませるようなストローク)、そしてヒップホップを意識したリズムなど、『Isn’t Anything』の頃のマイブラと非常によく似た構造を持つ。また、そうしたセンスはザ・ゴー!チームとも共通するものを個人的には感じるのだ。


Photo by Shuya Nakano


Photo by Shuya Nakano


Photo by Shuya Nakano


Photo by Shuya Nakano

さておき、オロノの存在感や楽曲の素晴らしさと共に特筆すべきは、彼らの映像センス。例えば「Night Time」では、深夜の街をチャリで疾走するオロノの映像が、成層圏から見たオーロラの映像へと唐突に切り替わる。他にも、カバやクジラ、猫や犬などの画像が全く関係ない映像にコピペされた、シュールな「クソコラ」が大量に放出される。日常と非日常、地上と宇宙が脈絡なく繋がり、そこに新たな意味が生じたり、今見ている世界そのものが変わったりする感覚。まさしく彼女たちの音楽にある「サイケデリア」を視覚化していると言えよう。

後半は人気曲を畳み掛ける。テーマ曲「Sprorgnsm」では、サビのリフレインで自然発生的にシンガロングが巻き起こり、東京をテーマにした「Nai’s March」では、カエルの鳴き声や、JR東日本の発車メロディなどのサンプリング音に大きな歓声が上がった。そして、「Everybody Wants To Be Famous」、「Something For Your M.I.N.D」とキラーチューンを畳み掛け、予定よりも30分ほど早く終了した。


Photo by Shuya Nakano

まだまだ持ち曲も少なく、フル尺でセットリストを組むのは難しかったのだろう。彼らに対する期待の大きさに比べ、活動&創作ペースがついていけてないのでは? とつい余計な心配をしてしまいそうになるが、たった30分でこれだけの人たちを魅了させるポテンシャルは、きっと近い将来「大化け」するに違いない。そう確信させてくれるライブだった。



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