メタリカのラーズが語る「俺が自分でも怖いと感じる唯一の点は、恐れない能力があること」の意味

―子どもの頃に読んでいた本は何ですか?

MADマガジンを教えてもらったのが1976年で、アメリカを父と一緒に旅行していたときだった。この雑誌を通してアメリカ文化を数多く知ったよ。アウトサイダーなところ、自立しているところ、主流に対して軽くシニカルなところは、MADを通して養われた性格だね。

それ以外に子どもの頃に大好きだったのが「タンタンの冒険」、「アステリックス」、「ラッキー・ルーク」。これはヨーロッパのコミックで、雑誌というよりも本だった。この3つに共通する点は、全員が冒険好きで、奇妙でおかしな状況に自ら入っていって、その状況から抜け出すために創造性を駆使して対処するところだ。

―今はどんな本を読んでいますか?

2週間前にスプリングスティーンの本をダウンロードしたよ。ローリングストーン誌とヴァニティ・フェア誌の記事も読んだし、CBSの番組「60 Minutes」でも見て、この本をチェックしたほうがいいと思ったんだ。彼の書き方が大好きだし、(彼の文章は)彼が書く歌詞と似ている。最高にポエティックだ。鬱などの問題についてオープンに語っているところも好感が持てるね。

―自分の回想録を書こうと思ったことはありますか?

ときどき考えることはあるよ。でも今すぐやりたいってことじゃない。人が書いた本を読むとき、特に俺の知り合いの本の場合、「ちょっと待て、実際はこうじゃなかったぜ」とか「これは実際に起きたことを少し脚色しているな」とかと思う部分があったりするわけだ。だから、そういう内容の本というのは難しいと思ってしまう。そこには俺のデンマーク人気質が関係していて、そういう類いの本を書くなら、絶対に真実を書かないとダメだって思うわけだよ。でも、真実を書くとすると、それを口外してほしくない関係者をも巻き込むことになる。

自分に関する話を書くとしたら、知的レベルを下げたいと思わないし、それと同時に、例えば1988年にAとBと一緒にこんな馬鹿な冒険をしたと書いたとして、そのAとBが俺と同じようにその話を公表したいと思っていると信じ込んじゃいけないとも思っている。これって少しSNSと似ているよ。「その人がその写真をあなたに投稿してほしいと願っていると確信できますか?」的な(笑)。つまり、他の人のプライバシーや選択を尊重しなとダメだってこと。なあ、別にクレイジーな話を300ページ書くってことじゃないからな。俺が言いたいのは、俺には回想録は書けないかもしれないってこと。だって、関係者の中には過去の話でも口外してほしくない人もいるだろうって必ず気にしてしまうから。それがオヤジから教わった人生の原則の一つなのさ。

―最も自分を甘やかした買い物は何ですか?

けっこう前のことだけど、人生のある時点で洋服に大枚をはたいた時期があった。スーツに3000ドルとか使っていた。でも2年後に自分のクローゼットを見て、「ヤバい、このスーツ、買ったはいいけど一度も着ていないぞ。タグがついたままだ」って思った。ありがたいことに、けっこう前にその状況を卒業したよ。

―若い頃の自分にアドバイスするとしたら何を言いますか?

「ゆっくり進め。全部受け止めろ。そんなに生き急がないで経過を楽しめ」だね。デイヴ・グロールが言った「できた、終わった、次」と正反対のことだ。俺の場合、80年代と90年代は十分に理解していなかった経験がとても多いんだ。俺たちは1991年にロシアに行った。それもソビエト連邦が崩壊している真っ最中に。あのとき、もう少しだけ目を見開いて見ていたらと思う。だって、当時の思い出が何もないんだから。後悔はしていないけど、最近は「うわっ、こりゃあ、かなりクレイジーだ」って感じに、もう少し落ち着いて見るようになっているのさ。



Translated by Miki Nakayama

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