メタリカのラーズが語る「俺が自分でも怖いと感じる唯一の点は、恐れない能力があること」の意味

メタリカのラーズ・ウルリッヒ(Photo by John Lamparski/Getty Images)



―映画『メタリカ:真実の瞬間 – Some Kind of Monster-』では彼と衝突していましたが、バンド内の意見の相違を解消するためにどんな方法を学びましたか?

バンドの健康以上に重要なものはないと学んだよ。人々にやりたくないことを無理強いしなくても、クールな何かを作り上げる機会がかならず出現するってね。

―あの映画を見て自分のどんな点に気づきましたか?

(笑)あれはけっこう辛かった。(沈黙)俺にはスタッフをコンパートメント化する能力があるようで、これには俺自身も怖くなることがある。だって、厳しい試練の様子を、俺はそこに座ったまま見ていることができるし、それが俺のせいだっていうのに自分の感情をそこから切り離すことができるんだよ。つまり、当事者なのに「第三者」になれるってこと。スタッフの中には彼らにとって何が大変なのかハッキリとわかる人もいた。俺たちの対処方法はそれぞれだったのさ。俺は問題を見ないように隠す方法を採用していた。これは明らかに精神医学の基礎中の基礎で、絶対にやっちゃいけないことなんだ。問題のいくつかは本当につらくて、俺は自分の感情をそこから切り離すしかなかった。
(※コンパートメント化:人々のさまざまな側面を区別し、互いに影響を及ぼさないようにすること)



―自分で見た自分の姿は気に入らなかったですか?

ああ、スタッフの何人かが俺の前で心のうちを明らかにする様子は見ていられないほどつらかった。俺たちは完全に並外れていて、人々を受けていると誇りに思っていた。でも明らかに、スタッフの中にはプライベートすぎて、ほとんど窃視的と感じていたスタッフがいるってことだ。その状況を批判した人たちは情報過多だと言っていた。それって、会うとがっかりすることがあるから自分のヒーローには会わないってことと似ている。人々にとっては情報が多すぎるだろうが、俺がさっき言ったように、俺ならコンパートメント化できてしまう。でも、誤解しないでほしいのは、俺は映画を作ったことも、あれを公開する根性があったことも誇りに思っているってことだ。

俺が自分でも怖いと感じる唯一の点は、恐れない能力があることだ。ときどき、あまりの面の皮の厚さに自分でもビビってしまう。ナップスターの一件の結果として、俺はかなり大打撃を受けた。だから、ある意味、亀の甲を上に乗せて、そういうことから影響を受けないようにすることを学んだよ。

―あのナップスター事件に対する反感から学んだことは?

俺が学んだのは、メタリカの大好きな点がメンバー全員が直情的ってことだ。でも、その直情的な部分が俺たちの災いとなることもある。だって俺たちは着地する場所を確認しないで飛び降りるから。クリエイティヴな環境下では、そうできるのが最高なんだ。でもナップスターの場合、俺たちは一気に「連中をぶっ潰しちまえ! ヤツらを責めようぜ」に飛び降りちまった(笑)。そして、何の前触れもなく、クルマのライトで照らし出された鹿みたいになった。ナップスターが象徴する自由というものを過小評価していたんだよ。だから、ときには嫌でも飛び降りる前に適切な配慮をしないとダメだね。少なくとも、自分の着地点がどこかくらいは予測できないと(笑)。

―ナップスターの一件では、メタリカファンはバンドが彼らを標的にしていると思ったわけですよね。

あれは巧妙なやり方だった。だって、あれは俺たちとナップスターの問題だったのに、ナップスターは俺たちとファンの問題へとすり替えた。あれは、本当に、マジで、利口な動きだった。あれは俺たちの意図じゃなかったのさ。ナップスターの一件は金の問題じゃなかった。著作権の問題でもなかった。文字通り選択の問題だったのさ。つまり、音楽の無料ダウンロードを決める選択をするのは誰かってこと。俺たちは「ちょっと待て。それは俺たちが決めることだろう」と言ったわけだ。その後、他の考えをする人たちが出てきて、問題の焦点が欲深さや金銭へと移ったのさ。そして、俺たちにとっては晴天の霹靂で、「えっ? なに? どうしてそうなった? 俺たちは強欲じゃない! おい、待てよ。この議論の論点を誰がすり替えたんだ?」って(笑)。俺たちはそんなふうに面食らったよ。

―15年後の今、音楽業界が相変わらずの右肩下がりという状況を見ると、ナップスターに対するあなたたちの考えは正解でしたね。

「大山鳴動して鼠一匹」って、昔の人は上手いことを言ったよな。

Translated by Miki Nakayama

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