デモ・テープでは、メンバーが時折マル・エヴァンズやデレク・テイラーへ話しかけている声が聞こえる。恐らくそのふたりは、バンドのためにお茶を淹れたり煙草を巻いたりしていたと思われる。リンゴは静かにその場にいたが、『バンガロー・ビル』では彼の叫び声が聞こえる。とてもフレンドリーな雰囲気で、『ホワイト・アルバム』から敵意を差し引いたような出来だった。つまり『ホワイト・アルバム』とは似ても似つかないものといえる。何曲かは未完成な状態で、『ヤー・ブルース』のジョンは“自滅的(suicidal)”というよりは“不安定”で、ジョージの『ピッギーズ』は“ベーコン”でなく“ポークチョップ”を食べていることになっている。ジョージの歌が素晴らしい『サワー・ミルク・シー』は、リヴァプールの友人ジャッキー・ロマックスに提供され、1968年にヒットした。同曲のレコーディングには、ポール(ベース)とリンゴ(ドラム)も参加している。『アイム・ソー・タイアード』の中でジョンが、「When I hold you in your arms, when you show each one of your charms, I wonder should I get up and go to the funny farm? No, no, no!」とドゥーワップのモノローグを真似て語る場面のように、メンバーが互いに盛り上げようとしているのがわかる。