ゲイである自分を解き放ち、トロイ・シヴァンがポップ界の寵児となるまで

ゲイであることをカミングアウトし、ポップ界の寵児となったトロイ・シヴァン(Ryan Pfluger for Rolling Stone)

アリアナ・グランデをフィーチャリングしたニューシングル「ダンス・トゥ・ディス」で、ポップ界の寵児となったトロイ・シヴァン。10代にしてYouTubeスターとして注目の的となり、ゲイをカミングアウトし、スターダムを駆け上がった。オーストラリアの青年が、迷いを捨て、見事セカンドアルバムを完成させるまでを語った。

「クイアのたまり場によく通っていた」と、ニューアルバムについて語るシヴァン。「あそこでは、自分がマイノリティじゃないと実感できるんだ」

「これ、高いヒールでも乗れるかな?」訝しげにバイクに目をやりながら、トロイ・シヴァンは尋ねた。問題となっているヒールとは、彼が履いている黒のヘルムート ラングのポインテッドトウ・ブーツのこと。ヒールの高さは2インチ(約5センチ)――「メンズ? レディース? どっちかな」――バイクは最近流行りの新型モデルで、キーの代わりにスマホのアプリで起動タイプだ。シヴァンはさっとまたがって、エンジンをかけ、バイクを走らせた。そこで一言、「これ、停まるときはどうするの?」

6月半ば。23歳のポップ界の寵児シヴァンは、新たな住まいとなったロサンゼルスのウェストサイドで、美味しいコーヒーが飲める場所を探していた。素晴らしい出来栄えのニューアルバム『ブルーム』は間もなくリリース、アリアナ・グランデをフィーチャリングしたニューシングル「ダンス・トゥ・ディス」もその日の朝に解禁されたばかり。午後にはさっそく写真撮影が予定されていた。だが彼は、自分のための時間もちゃんと取るようにしている。朝7時、丘の斜面に立つ自宅で(目下、モデルで写真家のボーイフレンド、ジェイコブ・ビクセンマンと同棲中)朝7時に目を覚まし、まっさきにプールへ向かう。あえてスマホの電源は入れない。「起きてから1時間は、できるだけ電話を使わないようにしてるんだ。両親がよく言ってたよ、『朝っぱらから電話なんて! もっとプールを活用しなさい』ってね」

程度の差こそあれ、大勢の人々がテクノロジーに依存しているが、テクノロジーなくしては現在のシヴァンはいなかっただろう。ヨハネスブルグで生まれ、オーストラリアの海岸の町パースで育った彼は、10代にしてYouTubeのスターとして注目の的となった。最初はカバー曲を投稿していたが、やがてカメラに向かってカリスマ的なメッセージを配信するように。話題はジョークを交えたものから、日常生活を語るものまで多岐にわたった。自分がゲイだと気づいたのは14歳のころ。自分のアイデンティティ形成にSNSは欠かせない存在となっていた。もっとも、最初のうちは公表していなかった。「昔はYouTubeを使うときも、プライベートモードで検索して動画を見ていた」。クイアのチャットにも、別のハンドルネームで参加していた。しまいには年齢をごまかして、出会い系アプリGrindrにも登録した(「実際に出会いもあったよ。セックス目的じゃなくて、ちゃんとしたデートだった」とシヴァンは念を押した)。その後家族にカミングアウト。みな協力的だった。やがてシヴァンは偽IDでバーへ行き、年上の男性たちと会うようになった。いわゆる「自分探しの時期」で、この時にしばしば経験した「いやな思い出」は、『ブルーム』の1曲目「セブンティーン」の中でも歌われている。だが、1人の若いゲイの男の子として彼が本当に自分らしく振舞うことができたのは、仮想空間の中だった。2013年に「カミングアウト」と題した動画を投稿。閲覧数は800万件近くに上った。「インターネットのおかげで救われた」と、彼自身も語っている。

Translated by Akiko Kato

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