再生回数10億を記録、歌姫カミラ・カベロが描いたアメリカン・ドリーム

Peggy Sirota for Rolling Stone


暗喩的ではあるが、そのコンセプトはアルバム全編に共通している。「サムシングズ・ガッタ・ギヴ」は不毛な恋愛関係をテーマにした曲だが、自身のヘッドラインツアーで同曲を披露した際には、ブラック・ライブズ・マターと#MeTooムーブメントを支持する姿勢を示してみせた。アルバムの冒頭から45秒の時点で「ニコチン、ヘロイン、モルヒネ」と歌う彼女は、消耗する恋愛をドラッグのオーバードーズに喩えてみせる。ケーン・ブラウンをゲストに迎えた同曲のリミックスにおいて、混血のカントリーシンガーがオーバードーズについて歌うことは、世間の反感を買ってもおかしくなかった。「あの歌詞については意見が対立した」。デュークスはそう話す。「彼女のファンベースの年齢を考えれば、レーベルやマネージメントが反対するのは理解できるけど、僕らは主張を曲げる気はなかった。それが作品の重要なテーマだったから」。カベロはこう付け加える。「アルバム制作は私にとって、人々と深い部分でつながろうとするプロセスなの」。予定調和を嫌い、ユニークな歌声だけに頼ろうとしないその姿勢は、本作に人間味をもたらしている。

自然体で掴んだアメリカンドリームと、その先に広がる可能性

「うわっ、ごめん、もしかして着替えてた?」。リーバイス・スタジアムのバックステージにあるカベロの控え室に顔を出したロジャー・ゴールドは、ばつが悪そうにそう言った。幸いにもそれは彼の早とちりだったが、彼女のツアーではこういうホームドラマのワンシーンのような、どこか微笑ましい光景がしばしば見られる。スタッフの多くが家族を連れてツアーを回っていることも関係しているに違いないが、そういったムードを生んでいるのはカベロ自身の性格だ。彼女はセレブが集うパーティを好まず、クラブにも滅多に足を運ばない。21歳の誕生日は自宅で家族と共に過ごし、プールサイドでドミノピザを食べたという。「オレオと映画、あとお風呂があれば私は幸せなの。ちなみに、私は地べたに座ったままシャワーを浴びるタイプ」。時間や空間を他人とシェアすることに慣れきっている彼女は、先日のイタリアンレストランでのブランチにおいても、無意識のうちに筆者の注文した料理に手を伸ばしていた(「ごめんなさい!ものすごく失礼なことしちゃった!」)

バックステージでメイクアップアーティスト用の椅子に座った彼女は、筆者のいくつかの質問の内容が予想外だったらしく、グーグルで「変な質問」と検索した上で自問自答し始めた。「『これまでに身につけた最も恥ずかしいものは?』羽根のイヤリング。『自分が知っている中で、最も驚くべき事実は?』イルカが仲間を輪姦すること。これは鵜呑みにしてるわけじゃないんだけど、どうも本当っぽくない?」

カベロは現在もマイアミで両親と暮らしている。彼女が購入したその一軒家は、かつてカベロが90分かけて通った学校のすぐ近くにあり、現在は妹がそこに通っている。できるだけ頻繁に帰宅するようにしているものの、家族が最近飼い始めたジャーマンシェパードのサンダーは、未だにカベロを家族の一員とはみなしていない様子だという。「いつも乳首を噛まれるの」彼女はそう話す。「でも甘噛みだから大丈夫。噛みちぎられたら困るけどね」

先日、彼女のボーイフレンド(誰なのかは明かしていないが、彼女は「今はかつてなく幸せなの」と語っている)が所有する隠れ家で、彼女はビジュアライゼーションのエクササイズを行ったという。彼女が思い浮かべたのは、「ある建物の外で、あなたを愛する人々が佇んでいる。あなたは彼らに語りかけるけれど、彼らは返事をしない。あなたは既に死んでしまっているから」というイメージだった。そうすることで、自分が後に後悔すること、今の自分がすべきことを理解できるのだという。カベロはより頻繁に祖母に電話すること、そして2日以上のオフが取れた際には実家に帰ることを決意した。「それ以上に大切なことなんてないもの」。そう言って彼女は、目の前で手を大きく振ってみせた。まるでその手に掴んだ成功さえも、所詮は幻にすぎないと言わんばかりに。

それでも、彼女のアメリカンドリームは続いていく。髪を後頭部で丸く束ねた彼女は、無数のカメラが待ち構えるミート&グリートエリアに向かって、足音を響かせながらスタジアムの通路を歩いていく。彼女が姿を見せると同時に、会場はファンの歓声に包まれた。サインと写真撮影に1人ずつ応じていく彼女を前に、ファンの誰もが興奮を隠しきれずにいる。カベロはその思いを汲み取るかのように、ためらうことなく小さな腕を広げ、笑顔で彼らを抱きしめていた。

Translated by Masaaki Yoshida

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