再生回数10億を記録、歌姫カミラ・カベロが描いたアメリカン・ドリーム

Peggy Sirota for Rolling Stone


ファーストキスを経験したばかりだった16歳のときに、彼女は曲を書き始めた。当時はフィフス・ハーモニーの活動で手一杯だったが(「いろんなプロデューサーが書いた曲を、2週間くらいで全部レコーディングしてた。次、ハイ次、って感じでね)、彼女はネット上で見つけたインスト曲に歌を乗せながら、それらをいつか他のアーティストに歌ってもらおうと考えていたという。しかし最終的に、彼女はその曲を自分で歌うことに決めた。「自分のファーストキスについての曲を、他の誰かに歌ってもらうなんて変だと思ったの。恋をした男性について歌ったこの曲は、私自身の物語なんだもの」

そして現在、カリフォルニアの太陽を全身に浴びている彼女は、心身ともに様々なストレスから解放されている。具体的な名前や出来事については伏せつつも、彼女はフィフス・ハーモニーとしての活動と、ソロとしてのキャリアの追求を並行して進めることは許されないと告げられたことを仄めかした。半ば強制的にグループを追われる形となったが、彼女自身は友好的に袂を分かつことを望んでいたという。「私が脱退を考えたのは、スポットライトを独り占めしたいからなんかじゃなかった」。彼女はそう話す。「あの頃、私たちはみんな子どもだった。全員がもっと大人になれていたら、誰かがグループにいながらソロ活動を始めることを咎めたりしなかったと思う。他人の生き方に口を挟むなんて許されないと、今はみんな知ってると思うの。飛び立とうとする人を引き止めることは、誰にもできないもの」(本誌はフィフス・ハーモニーの代理人にコメントを求めたが、返答は得られていない)


左からカベロ、テイラー・スウィフト、チャーリーXCX(Photo by CHRISTOPHER POLK)

カベロの脱退について、残されたメンバーの胸中が穏やかでないことは明らかだった。彼女たちはカベロが傲慢な人間であると暗に主張し、4人で再出発した直後に出演したMTVビデオミュージックアワードのパフォーマンスでは、顔を伏せた5人目のメンバーが開始直後にステージから消え去るという、露骨ともいえるスタントを行ってみせた。「5年間苦楽を共にしたグループからの脱退は、私にとってもつらいことだった」。そう話すカベロは、何度かグループのことを元恋人と呼んだ。一方で、グループの人気に翳りが見え始めたことを受けて(フィフス・ハーモニーは3月に活動休止を宣言した)、一部のファンからは心ないツイートを向けられることもあった。

曲を書くことはカベロにとって、胸に秘めた想いを吐き出す手段だった。「アルバムには収録されなかった曲がたくさんあるの。すごくプライベートな内容のね」。スウィフトからもらった「感じたことを曲にするの」というアドバイスも、彼女の創作意欲を後押しした。当初アルバムは『ハーティング、ヒーリング、ラヴィング』という凝ったタイトルになる予定だったが、結局『カミラ』で落ち着いた。彼女の新たなステージの幕開けを飾る作品として、それ以上に相応しいタイトルは存在しない。

移民としてのルーツとソロアルバムの制作背景

カベロは6歳のとき、人生で最初の岐路に立った。記憶は曖昧だが、夜遅くにとあるガソリンスタンドで、母親が拙い英語でミルクを買い求めるのを、彼女におんぶされながら見ていた覚えがあるという。移住申請が認められた彼女らは、仕事が見つかるまで寝床を提供してくれるという友人の申し出を頼りに、故郷のハバナからメキシコに渡り、テキサスを経由して、36時間かけて最終目的地のマイアミに向かうバスに揺られていた。バックパックひとつで出発した彼らの所持金はわずか500ドルであり、そのうちの200ドルがバス代に消えた。カベロ曰く、行き先はディズニー・ワールドだと聞かされていたという。

「母さんはずっとアメリカに移住したがってた」。カベロはそう話す。「妊娠したとき、母さんは私が将来どんな夢を持ったとしても、それを追いかけられる場所で暮らしたいと思ったらしいの」。エストラバオはキューバでは建築家として働いていたが、アメリカでは法務官として勤務しつつ、裕福な地域を住所として偽って登録することで、カベロを自宅から1時間半の距離にある有名公立校に通わせた。2人がアメリカに移住してから1年以上が経った頃、メキシコ国籍のカベロの父親はリオ・グランデ川を泳いで渡り、家族は再びひとつ屋根の下で暮らし始めた(彼は2016年に永住権を取得している)。移住後、彼はショッピングモールで洗車の仕事を始めたという。

Translated by Masaaki Yoshida

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