米帰還兵たちがプロレスを通してPTSDと向き合う理由

ヴァルハラ・クラブのレスラー3人のなかでも、少なくとも1人はイラクから帰還して自殺した友を抱えている。「まさにそういう人にこそ関わっていきたい」とブレイザーは語る。彼はヴァルハラ・クラブでのツアー巡業を願っている。全国の拠点で試合をして、試合後に語り、帰還兵同士の結びつきを目指すのだ。彼らは自分たちのドキュメンタリーも撮影している。そのなかで彼らは自分たちの再適応問題やどのようにプロレスがトラウマの回復を支えてきたかを語る。

また、彼らはこの作品のパブリックビューイングを開催、イベントでのディスカッションやファンへの働きかけに務めてきた。多くの場合、これら試合後の試みは実を結んできた。握手、ハグ、Facebookなどなど。しかしエディがリング上でくり広げる強烈なパフォーマンスは、強い反発も引き起こしてきた。

ミネラル・ウェルズ・レジオン・ホールの駐車場に立ち戻ってみよう。怒った帰還兵が1人、彼らレスラーが試合中に軍を侮辱したとエディに向かって食ってかかっていた。エディは何とか自分も帰還兵であることなどを説明してわかってもらおうとするのだが、この怒った帰還兵は聞く耳も持たなかった。結局、その帰還兵は同行していた友人になだめられて帰っていった。
「たぶん、ある程度の微調整は必要だろう」とエディは語る。会話が成り立たなかった、しかしおそらく支援が必要であろうこの帰還兵とのやり取りを振り返り、「あえて挑発して巻き込むんだ。しかしそのままこっちに襲いかかってくることもある。バランスの問題だ」

また、可能な限り働きかけることにかかわる課題だ、とも彼は言う。ヴァルハラ・クラブがたとえ一度に1人か2人にしかそこまでは関われないにせよ、試みる価値は十分にある、と3人は語る。3人とも既にもう、あまりに多くのものを失ってきたのだ。異国で亡くなった友人たち、帰ってきてもなお自ら命を絶った者たち、世界のバランスを取り戻せないままの者たち。3人のレスラーたちはどんなにわずかなものであれ、PTSDからの回復は大切な勝利なのだと考えている。

「僕にとって大切なことだ」とブレイザーは電話越しに語ってくれた。彼は次に控えた試合やトライアウト、舞台装置やTシャツのデザインについて話した。彼は妻と2人の子どもたちのために夕飯の料理もしている。「こちらの目が開かれた思いだ。自分が完全に変わった。そうすることで自分のためになることに気付き、だからこそ、他のみんなを助けていきたいと思う」

Translated by LIVING YELLOW

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