菅田将暉インタビュー「自分にとって音楽は<やり残したもの>という感覚がある」

ーそうやって自分の中のものを昇華させていくための音楽表現がアルバム『PLAY』や初めてのツアーだったとすると、今回の「ロングホープ・フィリア」は、漫画もアニメも大人気である作品の劇場版主題歌ですね。誰かのため、誰かを勇気づけるための歌というのは、菅田さんにとってまた別の意味を持つ、音楽での新しい挑戦ですね。

菅田:確かに、おっしゃる通りです。音楽を楽しい、と再び思い始めた当初は、衝動的なものがすごく大きかったと思いますし、もちろん未だにそういうものもあるんですけど……。今の自分はありがたいことに、いろいろなものを作っていけたりするし、それを発表できる場所があったりもする。ならば、表現者としていろいろやらない手はないと思います。今回は『僕のヒーローアカデミア』(週刊少年ジャンプで連載中)の映画版主題歌というお話をいただけて、僕は生粋のジャンプっ子だし、しかもamazarashiさんに曲を書いていただけて、本当にうれしいです。

ーそもそも菅田さん自身がヒーロー出身ですし、本当にこの曲を歌うにはぴったりの存在なのかな、とも感じました。

菅田:あ、でもそこはちょっとややこしさもあってですね……! というのも「これはオールマイト(作中で、主人公たちが目指すことになる平和の象徴・絶対的ヒーロー)目線の楽曲です」とamazarashiの秋田ひろむさんがコメントを下さっていて、でもそれと同時に「菅田くんはどこかこの話の主人公・出久(でく)と重なる部分もあるからぴったりだと思う」とも言ってくれていた。でもね「だったら出久目線の曲じゃないと、これを自分が歌うことで、いろいろと矛盾してしまわないか!?」と僕は思っていて。で、そんななか、今さっきふと「ああ、たぶん“オールマイト”というのは僕の中でいう俳優業の部分で、出久は音楽業での自分なんじゃないか」という気がしてきたんですよ。もちろん俳優業もまだまだこれからいっぱいがんばらなきゃいけないし、未熟なところはたくさんあるものの。いま話したこの両面があると、“過去に仮面ライダーとしてヒーローを務めた奴が、ヒーローを目指す主人公として歌う”というややこしさもちょっとだけ解消できる(笑)!

ーなるほど、かなり考えていらっしゃる。そこは複雑なんですね。

菅田:ここはもう、かなり考えたし、悩みましたよ。もとは無個性で、でも誰よりもヒーローというものに強く憧れを持つ、正義感ある男の子が主役だからこそ成立するお話なので。やっぱり、僕がそこに寄り添えないとこの曲は歌えないし、かつてヒーローとして一年間街を守った奴が歌うことで、説得力がなくなっちゃう部分もあるんじゃないかって。最近では“さとり世代”とか言われてマンガでも達観した主人公などが多いなか、このヒロアカは久々に“勝利・友情・努力”を軸にした王道少年マンガ作品で、最高なんですよ。そういうマンガが僕は好きだし、誰もが応援できる王道なものって、最強ですから。



ーちなみにカップリング曲「ソフトビニールフィギア」では、菅田さんが作詞を担当、作曲では菅田さんと並び“KNEEKIDS”というクレジットも付いていますね。


菅田:“KNEEKIDS”は、初めてのツアーを一緒に回ったメンバー達でのバンド名です。一緒にライブをやったメンバーで、今度はぜひともイチから曲を作ってみようと盛り上がっていたところ「どうやらシングルにはカップリングというものがあるじゃないか……!」と。ならば、誰かに依頼するだけじゃなく自分と仲間で作ってみようか、と一念発起しまして。あとひとつ、前回ライブをやって感じたことの反省点として“実は菅田の曲、暗いものが多い”っていうのがありまして(笑)。なので、こう手を振りながらお客さんとライブで盛り上がれるような曲を作りたいよね、と、まずはテンポ感から作り始めてみた曲です。

ーちなみにこの「ソフトビニールフィギア」っていうのは「ロングホープ・フィリア」ともじっているのですか……?

菅田:あ、気づいちゃいました? はははは。あの、そうです。ゴロ遊びですよねえ(笑)

ーいや、バンドだと「曲のタイトルどうする?」となったときにそういうノリ感で決まっていきがちだったりするな、と(笑)。そういう楽しそうな様子も伝わってきて、素敵ですね。ちなみに、菅田さんは最近どんな音楽を聴いていますか?

菅田:洋楽も、前よりは聴くようになりましたねえ。元々は「言葉わかんない」っていうのもあり、英語の曲とかあまり入ってこなかったんですけど、自分で曲を作ったりギターを弾いてみたりするようになって、純粋に聴いていて「うわあ、これかっこいい!」となるサウンドが増えました。『関ジャム 完全燃SHOW』のギターリフ特集とか観ながら自分でもやってみたりして「なるほど、このかっこよさには理由や、発想の転換、工夫がちゃんとあるんだよなあ」って思ったり。最近はドラマで共演している山田孝之さんが音楽にすごく詳しいので、お気に入りを一緒に聴かせてもらって「うわあああ~!!」と感動したり。

ーちなみに、それは誰の曲だったのでしょうか?

菅田:いや、これだけ言っておいて、すみません、肝心の名前が出て来ない(苦笑)。ダメですね。洋楽だろうとなんだろうとかっこいいなって思うものはたくさんあるのに名前を忘れるという……。逆に何かオススメありませんか?

ーRolling Stone Japan的には、たとえばアークティック・モンキーズの新譜『Tranquility Base Hotel&Casino』とかでしょうか。ギターリフのカッコよさで人気が出たバンドだったのに、最新アルバムではそれらを封印して多彩なアプローチで勝負している。賛否両論なんですけど、そういうチャレンジングなところ含めロックバンドしているなぁと。

菅田:なるほど、アークティック・モンキーズの新譜ですね。探して聴いてみます! いいですね、なんかこう、一気に編集部の熱量を感じましたけど(笑)。いいなあ、そういう企画やりたいなあ。いろんな音楽好きの人から曲やバンドを紹介してもらう、っていう。

ーまた今後そういう機会を設けられましたら、よろしくお願いします。

菅田:ぜひ。そういうの、待っておりますので。



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