デイヴ・グロールが語る、ワールドツアーとニルヴァーナ再結成ライブエピソード

―トム・ペティと共演しましたよね。彼の死は今でもみんなが悼んでいます。

まったくだよ。あれは本当にショックだった。彼と最後に会ったのが亡くなる1週間くらい前で。彼の最後のライブを見たんだ。本当に最高のライブだった。活気に満ち溢れていて、美しくて、ハッピーで、サウンドも最高で、バンドの状態も俺が見た中で一番良かったんだ。そして……そして、彼は逝ってしまった。彼がもういないなんて信じられないよ。でも、ラッキーなことに、俺たちには彼の音楽が残っている。彼の死は本当に辛かった。心が痛かったよ。

―新作を聞くとグレッグ・カースティンがあなたのアレンジの幅をこれまでなかったくらい押し広げた感じがします。彼から学んだことはありますか?

マジで、本当に、彼は疑う余地がないくらい、これまで会った中で一番才能のあるミュージシャン兼プロデューサーだ。正直、彼はブライアン・ウィルソンやジョージ・マーティンよりも上だと俺は思う。この発言、まともじゃないって思うだろうが、本気でそう思っているんだ。彼はアデルの「ハロー」みたいな究極にシンプルな曲を作ってアレンジできるし、ベックの曲のようにそれまで聞いたことのない奇妙な曲も作れる。弦楽四重奏のアレンジをドラフトからデモまで8分で完成させちゃう人間だぜ。「ザ・スカイ・イズ・ア・ネイバーフッド」の、ディズニーのファンタジアみたいなクレージーなストリングスとハーモニーを、彼は5分で仕上げちまった。それを聞いて、俺は「お前はどこの星から来たんだ?」って思ったよ。彼と仕事するのは本当に心が踊る。というのも、フー・ファイターズというのは知らない人と一緒に仕事をしないんだ。グレッグも2〜3年前に知り合っていて、今回初めて一緒にレコードを作った。彼と会ったのは、彼が在籍しているザ・バード・アンド・ザ・ビーを知っていたからだ。最初は彼がプロデューサーだってことすら知らなかったよ。でも、彼とは友達だったし、最優秀プロデューサーに選ばれたから、ロックレコードを作れるだろうって思ったわけだ。彼、それまで一度もロックレコードを作っていなかったからね。

―メロディックなハードロック曲を作るときに、メロディックとハードという2つが衝突する可能性があるのですが、そのバランスを取るためにどんなことをしていますか?

そうだな、俺の場合、いつも最初にメロディができる。必ずそうだ。だから、今回のアルバムの曲も全部アコースティック・ギターで作られた。つまり、「ラン」だろうが、「スカイ・イズ・ア・ネイバーフッド」だろうが、全部そうってこと。全曲アコギで作って、次の段階に進む前にリフと絡むメロディがあることを確認する。ノイズを作るのは簡単だ。正直に言うと、人っていうのはノイズやドローンに憧れを感じるって知っているけど、本当のチャレンジというのは、メロディが際立つシンプルな曲を作ることなんだよ。そういう曲はライブ演奏でもチャレンジになる。そうだな、この間、アルバム収録曲のスタジオ・バージョンを聞いた。この曲はライブで毎晩プレイしている曲で、スタジオ・バージョンを聞いて「なんだよ!こんなにおとなしい曲だったのか」って思った。だって、ライブで演奏しているその曲はブルドーザー並みに強烈だから。それに、3時間のライブをやっていると、最初の45分くらいで「ああ、今夜もこのマラソンしなきゃダメなのか」って思う。今回のツアーでは、最初の5〜6曲はノンストップで演奏して、1時間過ぎた頃に初めて観客に挨拶している。実はここからライブが楽しくなるんだよ。俺たちはするべきことをしているだけで、それ以外のことはどうやっていいのか、俺には全然わからないね。

―最近リル・パンプを新しいパンクロックと言っていましたが、「グッチ・ギャング」のどこが好きなのですか?

パット・スミアーと俺はリル・パンプの大ファンになっちゃって、つい最近パットと同じようなことを話していた。君の父親がクラシックの訓練を受けたミュージシャンだとして、その人にジャームズのレコードを聞かせると想像してみてくれ。君の父親はどんなふうに反応すると思う? ガキの頃にパンクロックを聞いていて、俺が求めたのはノイズと反抗だった。それがサタニックデスメタルでも、インダストリアル・ノイズでも同じことさ。俺のレコード・コレクションを漁ったら、きっと「ノイズだらけじゃないか」と思うはずだ。俺は良質なトラップビートが大好きだし、ナイスな808(※ローランドTR-808)が大好きなんだよ。で、「グッチ・ギャング」で俺が一番気に入っているのが、尺が2分ってこと。DRIかマイナー・スレット並みの長さだ。まあ、俺が顔にタトゥーを入れるってことじゃないけど、(リル・パンプの)「D Rose」がかかった途端にKOされちゃうね。



Translated by Miki Nakayama

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