バイセクシャルとパンセクシャルの違いは何か?困惑するLGBTQコミュニティ

(Photo by Xinhua/Li Muzi )

全ての人々に門戸を開くゲイプライド、でも最近「バイセクシャル」という言葉に風当たりが強いという。一見単刀直入なセクシャリティの名称も、実は曖昧でLGBTQコミュニティも困惑気味だ。

クイアの活動家で、ドラマ「Younger(原題)」にも出演しているニコ・トルトレッラに自らのアイデンティティについて質問すると、彼は大きく息をついてこう答えた。「うーん、それはかなりヘビーな質問だね」

「最近の(クイア)ムーブメントでは、みんな個人としてではなく、ある特定の言葉でくくられたがるみたいだ」と、29歳の俳優はローリングストーン誌のインタビューで答えた。「自由なセクシャリティの立場からいえば、ひとつの呼び名である必要はない、という意見に賛成だ」

バイセクシャル、パンセクシャル、自由な性、クイア、あるいは単に“ノンカテゴリー”。呼び方はいろいろだが、ようするに、男性・女性という性別に限定されることなく惹かれるタイプのこと。だが実のところ、これらの定義にはLGBTQコミュニティの中でも混乱が生じていて、とくにバイセクシャルに関しては当事者間でも意見が分かれている。こうした混乱の中から生まれたのが、パンセクシャルという言葉だ。より広い範囲の人々を的確に言い表そうとして編み出されたのだが、これがまた、LGBTQコミュニティの中で波紋を呼んでいる。これまでバイセクシャルとして自らの立場を表明してきた人々が、別の名前でくくられることに懸念を感じているのだ。

パンセクシャルの意味は明白だ。精神的または肉体的、あるいは両方で、あらゆるジェンダーに惹かれる人のこと。つまり、異性愛者、トランスジェンダー、エイジェンダー(※性別の概念が当てはまらない人々)、ジェンダー・ノンコンフォーミング(※従来の性の概念ではとらえきれない、新たな性の概念を持つ人々)も全部ひっくるめて、性的嗜好の対象となる。「パン」という接頭詞は、ギリシャ語で「全て」を意味する。だが、それほど知られているわけではない。2か月前、ジャネール・モネイがローリングストーン誌の特集記事で自らをクイアであり、パンセクシャルだとカミングアウトした時、オンライン辞書メリアム=ウェブスターでのパンセクシャル件数はいつもの1万1000倍。その日もっとも検索された単語となった。

接頭詞「バイ」が「2」を意味するのはご存知の通り。これが理由で、多くの人々、おそらく大部分の人々が、バイセクシャルが惹かれるのは2つの性別、すなわち異性愛者の男性と異性愛者の女性だけだと思いこんでいる。クイアの世界でもバイセクシャルをこのように定義する人々がいて、バイセクシャルという言葉は性別二元論を助長している、と主張している。つまり、トランスジェンダーやジェンダー・ノンコンフォーミングは仲間外れだというのだ。

「バイ」が2を意味するものだとすれば、彼らの言い分はもっともだ。

だが、バイセクシャルと名乗る多くの人々は、僕自身も含め、かの有名なバイセクシャルの活動家ロビン・オクス(Robyn Ochs)が自身のwebサイトで展開するバイセクシャル論を支持している。「バイセクシャルとは、自分の中に恋愛感情および/または肉体的欲求を、ひとつ以上の性別および/またはジェンダーに感じる者のこと。ただし、複数の性別に同時に惹かれるわけではなく、感じ方も、度合いも異なる」

この定義によれば、「バイ」とは2つ(またはそれ以上の)ジェンダーを意味する。バイセクシャル・コミュニティの支援とバイセクシャルに対する意識向上を目指すNPO団体バイセクシャル・リサーチ・センター(BRC)で理事をつとめるガブリエル・ブロンダーはこう説明する。「私が思うバイセクシャルとは、自分のジェンダーとそれ以外のジェンダーに惹かれることよ」

パンセクシャルと名乗る人々の大部分は、このような定義をよしとしない。だからこそ、彼らはパンセクシャルという言葉を好むのだ。

バイセクシャルという言葉が普及したのは1976年、デビッド・ボウイがプレイボーイ誌とのインタビューで自らをバイセクシャルだと公言した時からだ。あの当時は、いまほど性別に対する微細な区分はなかった。だが、性別に関する理解が進んだいま、バイセクシャルはすべての性を包括するもの、という新たな定義を信奉する人々がいる一方で、バイセクシャルという言葉の代わりにより混乱の少ない新しい言葉、文字通り「すべて」を意味する「パン」の使用を呼びかける人もいる。

Translated by Akiko Kato

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