HYDEソロライブ 狂気の「第二形態」が示したもの

ZEPP TOKYOで開催された「HYDE LIVE 2018」(Photo by Takayuki Okada)

昨年12月のVAMPSの活動休止発表後、HYDEソロとしての12年ぶりのシングル「WHO‘S GONNA SAVE US」がリリースされ、12年ぶりのHYDEのソロツアー「HYDE LIVE 2018」が始まった。そのツアーの始まりとなったZEPP TOKYO 4DAYSの最終日7月3日公演を観た。

HYDEのソロライブをずっと観たいと思っていた。現在活動休止中のVAMPSはユニットなので、K.A.Zとのバランスが必要とされていたはずだし、L’Arc〜en〜Cielはモンスターバンドだから、HYDE個人の意思だけではどうにもならない存在なのは容易に想像がつく。しかもHYDEはここ数年、制作の拠点をアメリカに移していたので、進化・深化したHYDE自身が一体どんな状態なのかを知るにはソロが一番リアルなはずだからだ。

12年ぶりのソロツアーということでZEPP TOKYO 4DAYSのチケットも即完。当然この日も超満員。


Photo by Takayuki Okada

開演前、ステージには黒い幕がかかり、その黒い幕に開演時刻の6:66(夜7時06分)に向けてのカウントダウンが写し出されている。ちなみに、666はHYDEが大好きな“悪魔の数字”で、HYDEの2ndソロアルバムのタイトルでもある。そういえば、かつての取材でソロ2ndアルバムのタイトルを“6 6 6”にした理由を「自分が忘れかけていた少年時代に描いたロック像を形にしたくて、ジャケットを悪魔的なものにしてタイトルを“6 6 6”にしたんです」と教えてくれた。つまり、666という数字はHYDEのロックのプリミティブな部分を表しているとも言える。つまりこのカウントダウンは悪魔の世界が始まるカウントダウンであると同時に、プリミティブなロックの世界へのカウントダウンとも言えるんだと思う。

ステージに張られた幕の数字が666になると幕が開き、バンドメンバーとHYDEが登場。バンドメンバーは全員マスクを着用していて素顔が分からないし、HYDE自身も顔の半分が隠れるマスクを着け、口は大きく紅がひいてあり、まるでバットマンのジョーカーのようだ。ステージには日本語や英語が入り乱れた看板が飾ってあり、どこか異国の街に迷い込んだ感じがする。


Photo by Takayuki Okada

そんなミステリアスな空気の中、1曲目から新曲をフルスロットルで演奏。もちろん、オーディエンスもフルスロットルで応える。そして2曲目に、8月1日リリース予定の「AFTER LIGHT」が演奏されるとモッシュが始まった。

今回のツアー、HYDEが事前に予告していた通り、新曲がかなりの割合を占めるという挑戦的な構成だが、ハードで分厚いサウンドの前には新曲もへったくれもない。オーディエンスはモッシュやヘッドバンキングとフィジカルにライブを堪能している。しかも演奏だけではなくHYDEは「まだ演奏に慣れてないんで、手加減できません。おまえらをみんな食い散らかしてやる」とMCでも煽りまくり、オーディエンスの理性は本編開始まもなくで完全に崩壊状態。でも、このライブはそれが許される場所なのだ。HYDEもMCでそれを確認する。「ここは俺たちの城だから好きにしろ!」と。もちろんHYDE自身も壊れていく。

ステージでは常に激しく動きまわり、シャウトを続けた。そして本編最後の曲「MIDNIGHT CELEBRATION Ⅱ」では手にしていたFLAGが付いたマイクスタンドをあらんばかりの力で床に叩きつけるなど、歌うという理性的な行為以外は全て理想を投げ出したような狂気っぷりを見せつけた。そして、こうしてフィジカルを酷使し理性を越えた瞬間こそが本当の快楽であり、それこそが本当のロックだということをHYDEは分かっているから、身をもってオーディエンスにそれを見せ、一緒に体感してもらっているんだと思う。


Photo by Takayuki Okada

本編15曲、アンコール4曲の全19曲のステージは十分なほどハードだったが、さらにハードになっていきそうだ。MCでHYDEは「この第二形態はまだ始まったばかりだけど、みんなを食い散らかしてお腹いっぱいになって、もっとすごいところを見せてあげるから」と宣言していた。このMCから察するに、現在進行形の本ツアーで日々ハードになっていくHYDEのサウンドを体感できるはずだ。なので、この記事を読むにとどまらず、会場に足を運び、恥も外聞もなく、暴れてみることを勧める。とんでもない疲労はあるが、他では手に出来ない快楽と充足感がある。


Photo by Takayuki Okada

MCでもHYDEが「今を生きるんだよ! 今を生きろ!」と叫んでいたが、こうしたフィジカルを酷使し、理性を超えて行くプリミティブなロックこそ、フィジカルと生が希薄なこの時代に一番必要な気がする。HYDEの今回のソロツアーは、サウンド的には進化を見せてくれ、マインド的にはロックの原点を体感させてくれる。そして、これが今のHYDEそのものなのかもしれない。


Photo by Takayuki Okada

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