中川翔子×谷川亮「東京2020大会 公式マスコット誕生の秘密」

中川:日本ってキャラクター王国だし、本当に素晴らしいデザインのキャラクターが全国にたくさんあるじゃないですか。しかもインターネットが発達した今の世の中、プロとアマの境界線も曖昧になってきて、素人の方でもレベルが異常に高かったりするんですよね。そんな中、どのデザインにも似ていないオリジナルなキャラクターを生み出すのって本当に大変だと思うんです。もしかしたら今回、エンブレムのデザイン以上に難しかったかもしれない。実際に、例えばポケモンっぽいデザインとか、犬や猫など動物をモチーフにしたデザインが結構多かったんですよ。そんな中、この「ア案」はやっぱり目立っていて。どうやって描き出したんですか?







東京都オリンピック・パラリンピック準備局の公式Twitterアカウントより。左がオリンピック マスコット、右がパラリンピック マスコット。


谷口:まず、エンブレムの市松模様を使うということはすぐに思いついて。

中川:そういえば、エンブレムをモチーフにしたマスコットは他にいなかったかもしれない。

谷口:エンブレムをどうやって使おうかなと思った時に、「市松模様だしやっぱり和風かな?」と。最初は兜をかぶせたんです。そうすると、兜の「吹返」の部分と「つの飾り」を市松模様に出来るなと。それで顔を描き始めたらいい感じになってきて。「これは面白そうなマスコットが描けそうだな」と思いました。

それと、最初の段階では頭の部分にチョンマゲみたいな生花をあしらうつもりだったんですけど、思い切って取り去って。なるべくシンプルに見せようと思いました。あと、しょこたんの言うように、「近未来の、謎の生き物」っぽさは意識しましたね。何か動物とかモチーフにすると、似たようなデザインになってしまうと思ったので。

中川:それがオリンピックのマスコットですね。パラリンピックの方は、どうやって作っていきました?

谷口:オリンピックが市松模様だったので「文化」がテーマ、パラリンピックはそれに対して「自然」をテーマにしようと。それで、海外の人も良く知っている桜をモチーフにしたらどうだろう?と考えているうちに、顔のデザインが決まっていきました。

中川:そうだったんですね。でも本当に、世界中の人たちが「日本人の考える、オリンピック・パラリンピックのマスコットは一体どんなデザインになるんだろう」って、ものすごく期待して待っていたと思うんですよ。間違いなく歴史の教科書にも載るだろうし、それがこんな素敵なキャラクターで本当に良かったなあって思います。

谷口:ありがとうございます。

中川:谷口さんは、元々どんな道のりを経てキャラクターデザイナーになったのですか?

谷口:実は親父はイラストレーターなんです。僕とはタッチが全然違う、もっとリアルなイラストを描いているんですけど、小さい頃から親父にはずっと褒めてもらってたんですね。何を描いても褒めてはくれるんですけど、でも描き方は教えてくれない。「お前が好きなように描け」とよく言われてました。

中川:褒めて伸ばすって大事なことですよね。私は二次創作というか、すでに存在するキャラをもとに絵を描いているので、谷口さんみたいにゼロからイチを生み出す人が一番すごいと思うんです。

谷口:でも、僕も最初は『少年ジャンプ』に載っていた「ウイングマン」や、ビックリマンのキャラなどの模写から入りましたよ。

中川:「模写は大事」って漫画家の先生たちもよくおっしゃってますね。

谷口:見たままを描くのは、すごく勉強になりますよね。それが自分の基礎力を上げたと思います。で、そのうち「オリジナルキャラを描きたい」と思うようになってきて、『コロコロコミック』や『コミックボンボン』にあったコンテストに、しょっちゅう応募していたんです。「オリジナルSDガンダムコンテスト」とか。ちなみに「ガムラツイスト」のコンテストでは当選して、シールになったこともありました。

中川:すごい!

谷口:とにかく、「ウイングマン」のデザインが大好きでしたね。黒と青のシンプルな配色……その頃から「シンプルなもの」に惹かれるようになっていたのかもしれないです。

※本記事は「中川翔子のポップカルチャー・ラボ  presented by FUN’S PROJECT」からの転載です。続きはこちらでチェックできます。


谷口亮
キャラクターデザイナー。1974年生まれ。カリフォルニア州Cabrillo CollageをArt Majorで卒業。99年、オリジナルキャラクターの制作を開始。福岡市天神の路上でキャラクターグッズを販売しながら今に至る。キャラクターデザインを主にイラストレーターとして活動中。2018年2月28日、谷口がデザインした「ア案」作品が小学生の投票により、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式マスコットキャラクターに選出される。
http://ryos-w.com/


中川翔子
女優・タレント・歌手・声優・イラストレーターなど、多方面で活躍するマルチタレント。現在、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会のマスコットを決める「東京2020大会 マスコット審査会」審査員としても活動中。また、近年は女優として積極的に活動を行い、2015年には朝の連続テレビ小説「まれ」に出演。2017年にはTBS系ドラマ「あなたのことはそれほど」で、横山皆美役を演じた。今年1月にはミュージカル「戯伝写楽 2018」にヒロイン・おせい役として出演し、4月からはNHKドラマ「デイジー・ラック」にカバン職人・讃岐ミチル役として出演している。
http://www.shokotan.jp/

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