オダギリジョーと片桐健滋監督が語る「コメディ」の魅力と難しさ

映画『ルームロンダリング』に出演するオダギリジョー(左)と脚本・監督と務めた片桐健滋(右)(Photo by Takanori Kuroda)


──オダギリさんの役は、主人公の叔父で、距離を保ちつつも見守る役というか。そんな今回の役作りはどんなところに気をつけました?

オダギリ:いま監督がおっしゃったように、まずは台本について時間をかけて話し合ったんですね。その時点でもう、自分の役作りは9割近く終わっていて、方向性や温度感みたいなものはほとんど決まりました。役柄的に、撮影までに肉体改造するとかでもないし、全編スペイン語ということでもないので(笑)。

──全編スペイン語の映画、ありましたね(笑)。今回、「説教くさくない社会問題をコメディの視点で描く」というコンセプトを掲げていたそうですが、そういう意味でお手本となる映画はありましたか?

片桐:そうだなあ……。自分の好きな映画監督、ジャン=ピエール・ジュネやティム・バートンとか、そういうテイストを日本映画に落とし込んだら、こうなったという感じですかね。

──昔フランスに留学して、編集の勉強などもしたそうですが、その時の影響は大きいですか?

片桐:物凄く大きいと思います。日本に入ってくるフランス映画って、小難しいものが多いじゃないですか。でも実際は、コメディも沢山あるんですよ。かなりシニカルで僕は好きなんですけどね、あんまり日本に入ってこない。『奇人たちの晩餐会』『メルシィ!人生』くらいですかね。設定が突飛で、ブラックユーモアもたっぷりあって。自分の中の着眼点は、向こうにいた時に培われたと思っています。

──本作で取り扱っているテーマは「ストーカー」や「ネグレクト」、「外国人のオーバーステイ」、「地上げ」、「わけあり物件」など、実はかなり重いものばかりなんですよね、主に東京で起きているような。それをコメディでコーティングしている。

片桐:僕自身、そんなに明るい性格ではないので(笑)、暗いものを書いていると自分がどんどん沈んでしまうんです。そういう、ヘヴィなことが起きているシチュエーションを、面白く描いたほうが説教臭くなくなるし、観終わった後に、「なんか面白かったけど、東京にはこういう問題があるよな」って思ってもらえるんじゃないかと。その方が、エンターテインメントとしても良いのかなと思ったんですよね。

──オダギリさんは、コメディを演じることは好きですか?

オダギリ:コメディに関しては、三木聡監督の作品で多く経験させて頂きましたが、きっと皆さんが想像している現場の雰囲気とは全く違うんですよ。例えば『時効警察』とか“脱力系コメディ”みたいに言われていましたけど、脱力してる瞬間なんって全っ然ないくらいピリピリしているものなんです。だから僕にとってコメディは、「楽しい現場」というイメージは全くなくて。本当に寸部も狂わないタイミングで、正しいニュアンスを届けないと「笑い」にならない。本当に難しいし、胃が痛くなりますよね、だって、台本は面白いのに、役者が演じたら笑えなかったなんて、それもう「負け」じゃないですか(笑)。力が試されますよね。「気が重い」といったら言い過ぎですけど、中途半端に手を出すものじゃない。

──主演の池田エライザさんについてもお聞きします。これまでの彼女のイメージとはかなり違う役どころますよね。片桐さんは、なぜ彼女に白羽の矢を立てたのですか? 

片桐:自分にとって1本目の映画だったので、主演女優の新境地を開くような映画にしたかったんです。その女優を支えてくれる土台の俳優さんとして、オダギリさんが決まっていたのはとても心強かったですね。


©2018「ルームロンダリング」製作委員会

──オダギリさんは、彼女と共演してみてどう思いました?

オダギリ:池田さんは暗い部分があって、そこがどこから来るのか興味があったので、撮影の待ち時間などにインタビューをしていたんです(笑)。彼女の生い立ちや家庭環境などを聞いていると、けっこう面白くて。普通の家庭ではない面白いエピソードが沢山出てきたんですよね。

──へえ!

オダギリ:表現者って、そういうエピソードが沢山ないと、良いものは出せないんですよ。いろんなことに対して、いろんな感じ方が出来る人じゃないと俳優も向いていない。言い方は悪いけど、美しい家庭で美しく育った人よりも、複雑な家庭でいろんな経験をしてきた子のほうが、やっぱり引き出しも多いし、人間に対しても臆病ですよね。だからこそ、人に対して洞察力も着けば想像力も含めて、反応もいろんなパターンが出てくる。そういう意味で、池田さんは面白い素材だなと思ったし、この作品も彼女のある種の「暗さ」みたいなものが、魅力として上手く作用しているなと思いました。これからもっと面白い女優さんになっていくんじゃないかなと期待しています。

──オダギリさんは、そうやって共演者にインタビューすることはあるんですか?

オダギリ:興味のある人にはします(笑)。あんまりやらないかも知れないですね。きっと池田さんには興味があったんでしょうね。

──今までそうやって話を聞いて、「この人面白いなあ」と思った役者さんというと誰ですか?

オダギリ:最初に「この人は凄い!」と思ったのは。『時効警察』を一緒にやった麻生久美子さん。とにかく、女優としての才能というか、感性とかそういうものに驚かされましたね。2人で待ち時間の時に話していた内容を、撮影の本番でアドリブ的にぶつけてみると、それに対して何倍にも面白くしたものを返してくるんですよ。こういう人が、日本映画にいてくれるのは有難いなと思っています。

──こうやってお話を聞いていると、オダギリさんは日本映画全体のことも深く考えているし、関わる作品に対しても役者としてだけでなく積極的にコミットされているのだなと思いました。

オダギリ:自分にオファーしてくれるというのは、そういうことも含めて求められているのだろなと都合よく解釈しています(笑)。自分の感性も含めて必要としてもらっているのであれば、役者としてだけでなく、とにかくいろんなことを話して、一緒に作り上げていくという感覚でいつも取り組んでいますね。

──ところでお二人は、「わけあり物件」に住んだ経験や、幽霊を見た経験はありますか?

オダギリ:いやあ、特にないですね。ただ、うちの社長が仲良くしている占い師の方がいて、その占い師さんに言われたらしいんですが、当時僕が住んでいた物件は「良くない」って散々言われましたね(笑)。相性が悪いって。その物件はけっこう、長いこと住んでいたんですけど。別に何か幽霊的なものが出たわけではありませんが。

片桐:僕はラブホテルで幽霊を見たことがありますね。

オダギリ:ええ!?

片桐:単に酔っ払っていただけだったのかもしれないですが。まだ若い頃に入ったホテルの部屋の、冷蔵庫を開けたらその中に人がいたんです。それで慌てて2人で部屋を出ました。後日、自分が務めていたバーのマスターにそのことを話したら、「昔そこでデリヘルの人が殺されたよ」って。「だから大阪ミナミのバーテンは、あのホテルには誰も入らない」って言われて。それ以来、ラブホテルには行ってないです(笑)。

オダギリ:それはそれで、1本映画が撮れそうですね(笑)。




映画『ルームロンダリング』
7月7日より新宿武蔵野館、渋谷 HUMAX シネマ、シネ・リーブル池袋ほか全国ロ ードショー


出演:池田エライザ、渋川清彦、伊藤健太郎、光宗薫/オダギリジョー
監督:片桐健滋  
脚本:片桐健滋・梅本竜矢
2018 年/109分/日本/カラー/DCP/シネマスコープサイズ/5.1ch
©2018「ルームロンダリング」 製作委員会
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
配給:ファントム・フィルム
http://roomlaundering.com

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