LGBTQプライド月間、ストレートはパレードに参加すべきか否か?

毎年6月に、世界最大級のLGBTQの人権を訴えるイベント「プライド月間」がニューヨークで開催されている (Photo by David Silverman/Getty Images)

毎年6月にニューヨークで開催されている世界最大級のLGBTQの人権を訴えるイベント「プライド月間」。LGBTQの祭典に参加するのは友好の証? それともゲイコミュニティ荒らし?ストレートのサポーターは、果たしてパレードに参加するべきか否か?LGBTQの筆者が、ローリングストーン誌に寄稿してくれた。

「ゲイパレードに、私が参加してもいいものかしら?」

6月を迎えたある日、母がこう尋ねた。

僕の母はゲイじゃない。トランスジェンダーでもなければバイセクシャルでもない。ただ、クイア(Queer)である僕を心から誇りに思い、無条件に受け入れてくれている。母はLGBTQコミュニティへの支持を表明したいと思っているが、果たしてパレードに参加するのが正しいことなのかどうか、確信が持てずにいる。母だけではない。多くの善意ある人々が似たような疑問を抱いている。とくに今、2018年はその傾向が強い。

この数年は、LGBTQコミュニティにとって決して楽ではなかった。2015年の夏、最高裁判所による同性婚承認から始まった楽観主義の波は、たった1年であっという間に消散してしまった。フロリダのゲイクラブ「パルス」での銃乱射事件はアメリカ中を驚愕させ、その6か月後にはトランプ大統領とペンス副大統領が就任。LGBTQコミュニティの雰囲気は楽観ムードから一変、抗議モードへとシフトした。

だが、そもそもゲイプライド・ムーブメントは抗議から生まれたものだ。

ゲイによる最初の抗議デモは、1969年6月28日未明に起きた「ストーンウォールの反乱」を記念して行われた。当時ミューヨーク市のゲイコミュニティは、NY市警から繰り返し受ける露骨な差別や嫌がらせに辟易していた。そしてある夏の夜、グリニッチ・ヴィレッジのゲイバー「ストーンウォール・イン」で強制捜査が行われた際、ゲイたちはついに反旗を翻した。トランスジェンダーの活動家マーシャ・P・ジョンソンやシルヴィア・リヴェラを筆頭に、大勢の有力者たちが警察に牙をむいた。1年後、ストーンウォールの反乱を称えるべく、ゲイプライドのパレードが始まった。

今日、ゲイプライドはLGBTQコミュニティにとって様々な意味を持つ。社会の多様性を称える場所であり、普段マイノリティとして生きる人々が公共の場所に大挙して、マジョリティの気分を味わう場所でもある。だからこそ多くのゲイの仲間たちはストリートに繰り出し、公共の場で堂々と恋人にキスを交わし、けばけばしく飾り立てた衣装で闊歩する。ゲイの地位向上だけでなく、自分たちは決して一人ではなく、LGBTQコミュニティという大きな存在があるのだと改めて示すためでもある。また50年前と同じように、寛容と受容を求める運動でもある。職場での差別に終止符を打ち、他の人々と同等の医療ケアが受けられ、堂々と従軍できるように、とデモ行進をする。また、有色人種のトランスジェンダーの女性たちを守る運動でもある。近年、彼女たちを対象にした殺人事件は危機的な勢いで増え続けているのだ。

結局のところ、僕たちが戦う理由はひとつに凝縮できるだろう。つまり、LGBTQコミュニティに属さない全ての人々に仲間になってほしいのだ。ストレートの人々に対し、LGBTQが異性愛者と同等の扱いを受けるべきだと感じてほしいだけでなく、クイア1人1人の権利のために立ち上がってほしいのだ。

とはいえ、僕の母をはじめとする人々がゲイプライドへの参加をためらう気持ちもよくわかる。表面的なレベルでみれば、ゲイプライドはストレートの人々に乗っ取られてしまった。大企業はゲイプライド限定商品なるものを販売して、ゲイカルチャーを金儲けの種にしている――バーガーキングが2014年に「プラウドワッパー」を販売したのは、記憶に新しいところだ。このように様々な形でゲイプライドに流入してくるストレート文化に加え、この2年間でLGBTQコミュニティが味わった屈辱もあって、LGBTQ達やReclaim Pride Coalitionのような活動団体は、ゲイプライドを単なるお祭りではなく、抗議デモとして位置付けるようになった。

Translated by Akiko Kato

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