音楽業界がR・ケリーをかばい続ける理由ーーセクハラ抗議運動活動家との戦い

性的暴行を始め、さまざまな理由で相当数の女性たちから訴えられているR・ケリー(photo by Shutterstock)

未成年に対する淫行容疑の裁判は10年以上続き、先日配信大手のSpotifyが楽曲をプレイリストから削除したというニュースで再度注目を浴びたR・ケリー。”沈黙の壁”に守られたR・ケリーに対して、#MuteRKellyの活動家達は苛立を見せている。

ノース・カロライナ州のグリーンズボロ・コロシアムの前に集まった抗議集団の目的は明確で、彼女達の要求はR・ケリーの暴走をストップする事だ。40人ほどの抗議集団が、数々の性的虐待の容疑がかかった大物R&Bシンガーに対して、#MeToo(私も)、#TimesUp(セクハラ等を我慢していた時間は終わった)、#MuteRKelly(R・ケリーを辞めさせろ)等の、プラカードを掲げた。デモ集団は面会を拒否したコロシアムを糾弾した用紙を配布し、コロシアム本部に対して「どちらの味方なのか?」と声を合わせて訴えた。

6,500人が収容できるコロシアムで催されたライブにはその約4分の3のスペースを埋める5000人が集まり、彼のヒット曲である「イグニッション」のリミックス、「アイ・ビリーヴ・アイ・キャン・フライ」を歌い、ケリーはファンの携帯を自分の体にこすりつけるといったファンサービスも行った。「5000人もの人々がお金を支払ってR・ケリーを観たという事は、その5000人は黒人女性とその家族が主張している事実を信じていないという事だ」と抗議デモを組織した、性に関する権利団体であるシスターソングの代表であるオミサデ・バーニー・スコットは語ってくれた。

グリーンズボロで起こった出来事は性的な問題に対して沈黙を続け、何も無かったようにビジネスを続ける音楽業界の現状を表している。公式に質問状を何度出してもR・ケリーのマネージャーからの返答は無く、グリーンズボロ・コロシアム本部や、チケット販売を担当したチケットマスターを運営し2017年に6つのケリーのコンサートを企画したライブ・ネイション社、R・ケリーと長期にわたり契約を結んでいるレコード会社RCAとその親会社であるソニー・エンタテインメント、これらの全ての代理人はコメントを拒否している。

長年に渡って市民権に関する活動を続け、#MeTooムーヴメントの立役者にもなったタラナ・バーケは「我々はR・ケリーの問題について10年以上糾弾しているが、誰も注目していないように感じる。」と語る。「我々はライブ・ネイションに対してR・ケリーのコンサートを中止する事、RCAに対しては音楽産業から彼を締め出す事を要求している。」

R・ケリーの未成年に対する淫行容疑に関する裁判は10年以上続き、2008年には彼が14歳の少女と性交を交わし、少女に対して放尿していると思われる27分間のVHSビデオが発見され、ケリーは児童ポルノ容疑で起訴されたが、裁判で無罪を勝ち取り彼のシンガーとしてのキャリアも復活を遂げたように思われたが、それも束の間の出来事であった。2017年の6月に彼の自宅が性的虐待を含んだセックス・カルトと化してるというニュースがBuzzfeedによって報道された。しかしケリーのマネジメント、プロモーター、ラジオ局やレコード会社はこちらに関しても沈黙を続けている。

Translated by Hiroshi Takakura

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE