「音楽を所有する」時代の終焉:CDとダウンロードはいかに消滅したのか

2020年代はストリーミングとアナログ盤の時代だと確信している」とジャック・ホワイトは語る。(Photo by Shutterstock)


80年代初頭に登場したCDは20年間に渡って音楽業界の拡大に大きく貢献してきた。また、ナップスターの登場やインターネット上の著作権侵害行為の多発、その後のiTunes Storeの登場など、フォーマットの存続に赤信号が灯されても驚くべき力で復活したのである。前出のグラスによると、今でもCDを求めるのは年配の音楽リスナーで、カーステレオやホームシアター・システムとSpotifyやPandoraを接続するよりも、CD音源を取り込むことを好むと言う。また、ツアーで生計を立てているバンドやアーティストにとっても、アナログ盤やポータブルのハード・ドライヴよりも、CDの方がライブ音源を発売するのに好都合だということだ。「CDを出すのが必須なのか?」と、Disc Makersのマーケティング部長ダン・ベーカーが問いた。「インディー・アーティストなら、答えはイエスだ」とベーカー。そして、ここ10年間で一度に受注する平均CD数が1,000枚から300枚へと激減したことも教えてくれた。CD1,000枚をオーダーする場合、料金は約1,000ドル(約11万円)で、アナログ盤200枚なら1,800ドル(約20万円)だ。「アナログ盤の方が高価だ」と、CD Babyのマーケティング副社長ケヴィン・ブルーナーが言う。ちなみにCD Babyはアーティストの音楽販売やストリーミングを行っているレコード・レーベルだ。

とは言え、アーティストも、レーベルも、レコード店も、避けられないCDの終焉に向けて準備はしてきた。ソニーは主要CD工場を2011年に閉鎖し、米テレホートとインディアナの従業員380名を2018年初めに解雇した。一方、2007年は100万枚にも届かなかったアナログ盤の売り上げが2017年に1,400万枚まで急増したため、アナログ盤工場がいたる所に出現している。サン・ヴォルトのマネージャー、シャロン・アグネロは「最近のテクノロジーがそんなふうに進化しているだけ」と説明する。サン・ヴォルトは2005年のアルバム『Okemah and the Melody of Riot』のアナログ盤を4月21日のレコード・ストア・デイにリリースした(CDとダウンロードも今後リリース予定)。「テクノロジーの流れがCD受難の時代を作っている」とアグネロ。

2006年にアナログ盤の売り上げが伸び始めたとき、一時的な流行りと捉えた専門家もいた。しかし、もはや一時的な流行りとは言えない。2017年のアナログ盤の売り上げは25年間で最高値に達した。そのため、レーベルは洗練したパッケージに資金を投入し始めている。コンコード・レコードの『コンサート・フォー・ジョージ』は初のアナログ盤が最近リリースされ、このジャケットにはジェフ・リンの承認を得たラッカーが使用された。また、ライノは1969年のグレイトフル・デッドの『Filmore West』のアナログ5枚組ボックスセットをリリースし、これは即時完売。ジャック・ホワイトのレーベル、サード・マン・レコードは、最近デトロイトに自社のアナログ盤プレス工場をオープンしている。これは35年ぶりに作られて新しいレコードプレス工場だ。ホワイトが言う。「これは歴史的な音楽の保存だけじゃなくて、今リリースされている音楽のためにも本当に重要なことだ。アナログ盤は決定事項だよ。今から120年後も残っているとすれば、レコードは永遠に消えないってことだ。そう考えるだけで気分が良いよ」と。

Translated by Miki Nakayama

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