真木よう子が「耐え忍ぶ役」で見つけた家族の絆

映画『焼肉ドラゴン』に出演する真木よう子(Photo by Yoko Yamashita)

高度経済成長と大阪万博に沸く関西で、小さな焼肉店を営む在日韓国人の家族を描いた映画『焼肉ドラゴン』が、6月22日に公開される。

本作は、2008年に上映され朝日舞台芸術賞グランプリ、読売演劇大賞および最優秀作品賞など数々の演劇賞を受賞し、2011年、2016年と再演を重ねるなど熱狂的な支持を集める舞台を映画化したもの。作・演出を務めた鄭義信(チョン・ウィシン)が、映画でも初監督に挑んでいる。

また、一家の長女・静花役には真木よう子、静花に想いを寄せる男性・哲男に大泉洋が抜擢され、他には井上真央、桜庭ななみ、さらにキム・サンホ、イ・ジョンウンら日韓の名優が勢揃いし、時代に翻弄される一家の姿をユーモラスかつダイナミックに描いている。

今回は、映画『パッチギ!』に続いて二度目の在日韓国人役に挑戦した真木よう子に、作品についてはもちろん、「演じること」の醍醐味などについても聞いた。

─まずは、『焼肉ドラゴン』への出演が決まった率直な感想をお聞かせください。

真木:恥ずかしながら、お話をいただくまでそれほど伝説的な舞台があるとは知らなかったんです。舞台では観たことがなくて映像で拝見したのですが、すごく面白くて入り込んで観てしまいました。もちろん、「ぜひやってみたい」と。ただ、元々が舞台だったので、これを映像化した時の具体的な想像がつかなくて、大丈夫かな?っていう気持ちも少しありましたね。せっかく映像化するのであれば、舞台ではできないことも盛り込みたいなと。楽しみなのとドキドキ感、両方感じていました(笑)。

─ここで描かれている家族関係はかなりユニークですが、どんな思いで役作りをしましたか?

真木:在日1世、2世の物語ですので、いわば私たちの国の教科書にも、韓国の教科書にも載っていないことが描かれていると思うんです。そのことが多くの人たちに知ってもらいたいという個人的な思いは少なからずありました。ただ、鄭監督が言っていたのは、「お涙ちょうだい」の映画にするつもりはないと。もちろん、「国籍の違い」もテーマの一つではあるんですけど、どこの国だろうと家族の間には葛藤もあるし、ぶつかり合うときもある。それでも家族の絆というものは、そう簡単に崩れるものじゃない。明日に向かって前進していく人たちの、家族の絆を描きたいという、監督の思いは私も同感でした。

─真木さん演じる長女「静花」については、どんな印象を持ちましたか?

真木:これまで私があまり演じてこなかったタイプの女性だったので、最初はちょっとイメージが湧かなかったんです。だからこそ気になったというか。この、静花という女性になって、この作品の中に入ってみたらどうなるだろう?というチャレンジ精神ですよね。

─役を演じるにあたって特に大変だったのは?

真木:在日韓国人のことや、日本の近現代史については映画『パッチギ!』の撮影の時に、ある程度は勉強したんです。なので、そこは大丈夫だったんですが、静花は他の姉妹の中でも「我慢」する役柄なんです。哲男への思いがありながらも、彼と婚約した妹を傷つけたくない、幸せになってほしいという葛藤の中でずっと生きている子。そこを演じることはチャレンジングでしたね。今まで自分がやってきた役のほとんどは男勝りな性格の女性ばかりだったので(笑)。

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