全世界大ヒットTV番組「カープール・カラオケ」プロデューサーが語る制作裏話

ー番組ゲストはどういう基準で選んでいるのでしょう?

私の場合は、テレビにふさわしい音楽かどうかという点を念頭に置いているわ。それから、インターット上での見え方も同じぐらい重要ね。ラジオじゃないから、車の中で1人きりで音楽を聴くのとはわけが違う。テレビは視覚的なものだから、エンターテインメント性が必要なの。だから、ビジュアル的に面白いものが好き。うちの制作チームは優秀で、アーティストの演出に関してはあの手この手を尽くしてくれるわ。

ーこの10年、ネットでの動画投稿が主流になっていますが、仕事には影響がありましたか?

ものすごくあるわよ(笑) 番組は深夜0:30からスタートなんだけど、ふつうなら「今日のお題」から始まるでしょ。番組が始まった当初は脱インターネットが叫ばれていた時代だったから、はじめのうちは教科書通りでよかったんだけど、最近になってプロデューサー陣とジェームズは短い映像のフラッシュから始める方向で進めている。つまり、インターネットに乗りやすい番組作りということ。まさにこれが大きかったわね。ショーン・メンデスのようなアーティストをゲストに呼ぶのは、視聴率のためだけじゃないのよ。

私の仕事の大半はオンエアが中心。でも今じゃYouTubeユーザーだけじゃなく、メディアからも注目されているし、世間が次の日に何を見聞きするか、なにが報道されるかがキモになる時代。だからこそ、大物ゲストを呼ぶのはビッグチャンスなのよ。その点、うちの番組は上手くやっていると思う。これがこの番組の強みね。アーティストが出演を承諾してくれるのも、この点だと思うわ。 “カープール・カラオケ”みたいなものは本質的に噂になりやすいものね。


「テレビにふさわしい音楽かどうかを意識しています」と語るダイアナ・ミラー Terence Patrick/CBS

ーアーティストに対する見方は変わりましたか?

ええ。カーソン・デイリーの番組をやっていたころ、プロデューサーの1人が「アーティストの場合、MySpaceのユーザーと実際のファン、どっちが多いんだろう?」って訊いてきた。私は「何それ?」状態。いきなりデータ重視の世界ってわけ。でも今では、番組のYouTubeページを通して世間が何に反応しているのかがわかる。すごく便利よ、ものすごく参考にしている。

ージェームズ・コーデンから、ゲストアーティストのご指名がくることは?

もちろんあるわ。頻繁じゃないけどね。でも、彼が「この人を呼んで」って言ってくれるほうが嬉しいわね。一度、たしか夜中の11時ごろだったかしら、彼が「リッチ・チガをブッキングしてくれ」って言ってきたことがあった。昔はリッチ・ブライアンって呼んでたわね。理由とか説明はなし、四の五の言わずにブッキング。後になって判明したんだけど、エド・シーランがジェームズにリッチ・チガのことを話したらしいのよね。でもそんなことはどうでもいいの、ジェームズの言うことは正しいから。言い出した時点で、彼は自分のやりたいものをはっきりわかっているのよ。アーティストがパフォーマンスを終えたときの彼の表情で、彼が満足しているか、そうじゃないかが分かる。細かいことに口出しする人じゃないけど、本当に音楽が大好きなの。

ーショーン・メンデスの3月の出演と、6月の連続出演はどういう経緯で実現したのでしょう?

ショーンは過去に何度か番組に出演してくれて、私たちもショーンが気に入っていたし、幸い彼も番組を気に入ってくれたみたい(笑)。だから私の中では、自然にまとまったという感じね。ジェームズや番組のお偉方が彼のNewアルバムの噂を聞きつけて、とことん調べ上げた。4夜連続出演は全員のアイデアね。

もともと3月の出演の時は、演奏だけのつもりだったの。6月にまた出演してくれるし、お楽しみはそれまで取っておきたかったから。でも3月にショーンが出演した時、「せっかくショーン・メンデスをお迎えしたので、何か面白いことしましょう」って言っちゃったもんだから、彼と“フリンチ”をやることになったわけ。あれは面白かったわ。

“フリンチ”といえば面白い話があるの。番組に取り入れる前にスタッフが1日かけて予行練習をしてみたんだけど、誰1人として失敗しなかったスタッフはいなかった。その日の出演者がドン・チードルとウィリアム・H・メイシーとマット・ルブロンだったんだけど、3人ともみんな失敗しなかったの!「えーっ、なんでー?」って感じ。でも、ずっと番組でやり続けたおかげで、BTS(防弾少年団)も、フィフス・ハーモニーも、ハリー・スタイルズも、ヴィクトリア・ベッカムもトライしてくれた。バカバカしくて面白いわよね。

ーそんなに簡単に“フリンチ”のようなゲームをやってくれるものですか?

ええ。ミュージシャンはたいてい面白いことをやりたがるのよ。たいてい数か月とか数週間先のゲストをブッキングするんだけど、そういう時に私が「この3ヶ月間やってないような面白いこと、ない?」なんて言うと、構成作家はビックリしちゃう。だから、みんなの気持ちを汲み取って、「デミ・ロヴァートとやった“リフ・オフ”みたいなのをやりましょうよ」って言うと、スムーズに事が進むの。でも、時にはゲストがNGを出すこともある。「演奏に専念したいから、できるだけ声を使いたくない」って。その時はその時ね。

Translated by Akiko Kato

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