奇跡のバンド「ヴェルヴェット・リヴォルヴァー」2012年の再結成ライブを振り返る

大方のファンの予想通り、2008年のヨーロッパ・ツアー中、彼らは遂に崩壊し始めた。楽屋裏では何ヶ月間も異様な緊張感が続いていた。ウェイランドの奇妙な行動が原因で公演のキャンセルも続き、スコットランドのグラスゴーでの公演中にウェイランドが観客に向かって「お前らは今すごいものを見ているぜ。これがヴェルヴェット・リヴォルヴァーの最後のライブだ」と唐突に叫んだのである。そのMCのあとで数曲歌ったウェイランドは、突然マイクを放り投げてステージ袖に消えていった。翌日ソーラムが「昨夜は面白かったな」というポストを投稿した。「みんなもよく分かっていると思うけど、バンド内のいざこざが露呈してしまったようだ。バンドっていうのは結婚生活と似ている。仲違いすることもあるのさ。最近はライブのキャンセルなどもあって、不安定な状態が続いている。本当にイライラするよ。俺は嘘を言うつもりはないから」と続いた。

バンドはとりあえず持ち直して、その後8公演をこなしたが、4月1日に行われたアムステルダム公演後に楽器隊はウェイランドとの決別を公表した。その後の数年間は新たなヴォーカリストを迎えて活動を再開するという噂がたびたび流れたが、一度も実現することはなかった。2011年にはマイルス・ケネディと一緒に笑っているスラッシュの姿が見かけられ、彼にとってヴェルヴェット・リヴォルヴァーは過去のものという印象を世間に与えた。しかし、コンポーザーのジョン・オブライエンが2011年に他界したことがきっかけで変化が起きたのである。オブライエンはヴェルヴェット・リヴォルヴァーのリズム・ギタリスト、デイヴ・クシュナーの長年の友人だった。クシュナーはロサンゼルスのハウス・オブ・ブルースでオブライエンの遺族のための慈善公演を企画し、実現した。このライブに参加したのはマルーン5、シェリル・クロウ、トム・モレロ、スティーヴン・スティルズ。そして、クシュナーはこのライブのためにヴェルヴェット・リヴォルヴァーの再結成も実現した。「俺たちは4年くらい一緒にプレイしてなかった」とクシュナーがローリングストーン誌に語った。「だから、『どんなふうになるか、とりあえずやってみるか』って感じだったんだ」と。

この公演でのヴェルヴェット・リヴォルヴァーの再結成は、チケットの即時完売を約束したも同然だった。とは言え、彼らが準備できたのは4曲だけで、うち3曲がバンドのオリジナル曲(「サッカー・トレイン・ブルース」、「シー・ビルズ・クイック・マシーン」、「スリザー」)、1曲がピンク・フロイドのカヴァー曲「あなたがここにいてほしい(原題:Wish You Were Here)」だった。1曲目を歌い終わったあと、ウェイランドが観客に向かって「今日ここに来てくれて本当にありがとう」と語り始めた。そして「悲しい出来事がきっかけで集まることになったけど、みんなの優しさがあふれてるよ。俺とマットが以前、死んでしまった仲間のために同じようなライブを開催したことがあって、あれは本当に辛いライブだったのを覚えている。ジョンの家族に俺たちの愛、友情、祈りを全部捧げたいと思っているよ」と続いた。

曲と曲の間、ファンたちは「ツアー!」と連呼し続け、その後の再結成ツアーの噂を再燃させた。特にSTPが2013年にスコット・ウェイランドの解雇を発表し、ウェイランドがバンドを必要とする状況に再び陥ったあとは特に盛り上がった。2014年、ウェイランドがこんな発言をしている。「俺はあいつらに電話して数ヶ月間だけライブをやる提案をしたんだ。俺たちは案外仲が良いんだよ。ただ、俺はフルタイムでヴェルヴェット・リヴォルヴァーのボーカルをしたくないってだけなのさ。可能ならフェスティバルだけで歌いたい。ほら、その方が簡単に大金を稼げるからな」と。

離婚で大金が必要だったウェイランドは一度に大金が手に入る仕事を熱望していた。しかしヴェルヴェット・リヴォルヴァーの再結成は実現しない運命のようだった。そして、2015年12月3日、彼はドラッグの過剰摂取で急逝した。この5ヶ月後、ガンズが確実に大きな利益を見込める再結成ツアーを発表し、現在もこのツアーが続いている。そんな彼らが遂にヴェルヴェット・リヴォルヴァーの楽曲をコンサート中に演奏したのである。このバンドのレガシーを復活させる最高の方法だ。願わくば、次は「フォール・トゥ・ピーセズ」を演奏してほしい。

Translated by Miki Nakayama

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