マイケル・ジャクソンの遺産管理人が提訴中のドキュメンタリー5つのポイント

先週ABCが放送した特別番組「The Last Days of Michael Jackson」マイケル・ジャクソン・エステートはウォルト・ディズニー・カンパニーとABCテレビを提訴した。(Photo by Steve Granitz/Getty Images)

マイケル・ジャクソン・エステートは、先週ABCが放送した特別番組「The Last Days of Michael Jackson」でウォルト・ディズニー・カンパニーとABCテレビを提訴した。本作は、幼くして手にした名声からグローバルスターダム、そして後年の訴訟問題や借金まで、キング・オブ・ポップの生涯を辿るものだ。

先週水曜(米現地時間)、マイケル・ジャクソン・エステートはABCの特番『The Last Days of Michael Jackson』に対する抗議文を発表した。「無許可で制作された同番組は、マイケル・ジャクソンの生涯と功績を不当に扱った利己的なものであり、彼の尊厳と知的財産権、そして彼の子供たちへの配慮を著しく欠いている」

木曜に放送された『The Last Days of Michael Jackson』には、MJエステートの抗議文には見られない問題点も多かった。「可能性は無限大であり、やがて訪れる未来を誰も想像できていなかった」「贅沢の限りを尽くした彼は、後にその代償を支払うことになる」等、同番組には使い古された陳腐な表現が随所に登場した。既に広く知られたことばかりを取り上げ、机上の空論と根拠のない憶測に満ちた同番組は、視聴者の期待を裏切る内容だった。

幼くしてスターとなったジャクソン5時代、ソロとしてのキャリアの開始、『スリラー』の制作とその成功がもたらしたプレッシャー、幼児虐待疑惑(2度言及)を晴らすまでの過程、ドラッグへの依存、そしてカムバックツアーの準備中に起きたドラッグによる突然の死。彼の生涯を駆け足で辿るその内容はありきたりだと言わざるを得ないが、同番組によって改めて浮き彫りとなった5つのポイントを以下に挙げる。

1.  ジャクソンは非凡な音楽的才能と、ビジネス面における嗅覚を併せ持っていた

同作が彼のトラブルに満ちた私生活よりも、主にその輝かしい功績に焦点を当てているのは、彼のディスコグラフィーを辿るだけでアーティストとしての偉大さを容易に証明することができるからだろう(出演を拒否したのか依頼がなかったのかは不明だが、本作には彼の主なコラボレーターは一切登場しない)。多様なミュージシャンを起用しながら、彼は思い描いたリズムやメロディーを形にしていった。自身のクリエイティブプロセスを表現すべく、彼がビートボックスに興じるシーンは目を引いた。

主要なラジオ局が大半の黒人音楽のエアプレイを拒んでいた80年代初頭において、『スリラー』のシングル群はそういった垣根を越えてみせたが、同番組ではジャクソンと彼のチームによる戦略について考察してみせる。ポール・マッカートニーとのデュエット『ザ・ガール・イズ・マイン』と、ゲストにエディ・ヴァン・ヘイレンを迎えた『今夜はビート・イット』がシングルカットされた理由のひとつは、アルバムをそういった人種的偏見から切り離すためだった。CBSの社長ウォルター・イェトニコフはMTVに、「レーベルの白人アーティストたち(ビリー・ジョエルやブルース・スプリングスティーン等)のミュージックビデオの放映権が欲しければ、『ビリー・ジーン』を流せ」と迫ったという。

2. ジャクソンは決して満足しなかった

本ドキュメンタリーは、ジャクソンがその極端な完璧主義で自らを追い詰めていったと主張する。「次回作に対するプレッシャーは大きくなるばかりだ。ファンはアーティストに進化を求めるから」ジャクソンは過去のインタビューでそう語っている。「どれだけ優れた作品をどれだけ売ろうとも、いつだって『あのアルバムほどじゃない』なんて言われてしまう。『オフ・ザ・ウォール』の後もそうだった。『4曲のトップ10ヒットを出し、1000万枚売ったあのアルバムにはかなわない』誰もがそんな風に言ってたんだ」

モータウンの創設25周年記念コンサートでの伝説的パフォーマンスにさえ、彼は満足していなかったという。「自分のパフォーマンスに完全に満足することは、これからも永遠にないと思う」ジャクソンはそう語っている。「あのパフォーマンスにも、僕は満足してなかった。5回スピンして爪先立ちのままフリーズするはずだったのに、僕は失敗した。自分自身に失望し、腹が立った」

しかしショーの後、自身のアイドルであるフレッド・アステアからダンスを褒めてもらった時は嬉しかったと、彼は素直な思いを口にしている。

Translated by Masaaki Yoshida

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