ジャネール・モネイが語る、セクシュアリティの秘密、プリンスとの関係

ジャネール・モネイ(Photo by Matt Jones for Rolling Stone)

シーンを揺るがし続けてきたポップ・アンドロイド、その仮面の下に隠された素顔とは。

自身のレーベル、Wondaland Recordsでの告白

宇宙服に身を包んだジャネール・モネイは雄叫びを上げた。4月上旬、彼女はアトランタに所有するWondaland Records本部の地下スタジオにいた。所狭しと並べられたコンピューターのモニターやTVスクリーンには、プリンス、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、パム・グリア、ティナ・ターナー、ルピタ・ニョンゴ、デヴィッド・ボウイ等、彼女にとってのヒーローたちの姿が映し出されている。

彼女は今、それまで家族と親しい友人しか知らなかったある事実を、初めてメディアの前で明かそうとしていた。「噂を真実に変えるの」。新作『ダーティー・コンピューター』の収録曲で、彼女はそう歌っている。過去10年で残したアルバムやミュージックビデオ、そして取材を通じて「宇宙からやってきたエイリアン/顔のないサイバーガール」というイメージを築き上げてきたジャネール・モネイは、自分が脆く欠陥だらけの、血の通った32歳の生身の人間であるとついに認めた。


Photo by Matt Jones

もうひとつ、彼女はある秘密を明かしてみせた。「アメリカに生きるクィアの黒人女性として」。そう切り出した彼女は、大きく息をついてからこう続けた。「男性と女性の両方と関係を持ってきた私は、さしずめ性にとらわれないマザーファッカーってところね」。彼女はかつて自身をバイセクシャルとみなしていたが、あるとき、より正確な表現に出会ったという。「パンセクシュアリティについて知ったとき、これぞまさに自分だって思ったの。私はきっと、今も本当の自分を探し続けているんだと思う」

彼女が身につけているNASA製の白いタイトな宇宙服には、片方の袖に司令官のワッペン、もう片方にはアメリカ国旗のパッチがあしらわれている。周囲にカメラマンの姿はなく、自身のスタジオでリラックスした様子の彼女は、どちらのパッチにも大きな意味はないと語る。その宇宙服はおそらく、彼女が何年にも渡って演じ続けてきた、人間に恋をしつつも同胞たちの解放を叫ぶアンドロイド、シンディ・メイウェザーが必要としたものなのだろう。

厳しいショービジネスの世界で生きていくには、キャリア初期のモネイはあまりにナイーブだった。ペルソナ、中性的な服装、オフステージでも素顔を明かそうとしない頑なな姿勢、その全ては自身を守るための鎧だった。「先入観を持たれるのが嫌だったの」。彼女はそう話す。「この業界における黒人女性アーティストの典型的な容姿から、私はかけ離れていたから」

また彼女が貫く完璧主義は、自身のキャリアを成功に導く一方で、持て余す感情を抑制する役割を果たしていた。その意味でも、非の打ち所のないロボットを演じることには大きな意義があった。しかしその個性を「コンピューター・ウイルス」と捉えていた彼女は、2010年のデビュー作『ジ・アーチアンドロイド』の発表前から、長くセラピーに通い続けていた。「自分は誤解されてるって感じてた」。彼女はそう話す。「自己崩壊して、大勢の人の前で醜態を晒してしまう前に、何とかしなきゃいけないと思ってた。頂点を極められなかったら、周囲から好奇の目で見られると思ってたの。独りよがりで勝手な思い込みに、私は押しつぶされそうになってた」

Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE