ジャネール・モネイが語る、セクシュアリティの秘密、プリンスとの関係

ジャネール・モネイ(Photo by Matt Jones for Rolling Stone)



2016年の大統領選の夜、モネイは言葉にならない感情を覚えていたという。「生まれて初めて、私は自分が怯えていることを悟ったの」。モネイのファンであることを公言し、ホワイトハウスの中庭で彼女のショーを楽しんだオバマ大統領の後を引き継ぐのは、彼女の存在を脅かしかねない人物だった。「こんなふうに考えてしまうの」。彼女はこう話す。「明日目が覚めたら、人々が私を人間として扱わないようになってるんじゃないかって」

モネイは活動家としても知られている。2015年にはWondalandの仲間たちと共に「Hell You Talmbout」を発表し、人種差別と警察による暴力の犠牲になっている黒人の権利を訴えた。#MeTooおよびTime’s Upムーヴメントが起こる前に、モネイは音楽業界における女性の待遇改善を訴える団体、Fem the Futureを設立している。2017年のウィメンズ・マーチではパフォーマンスのみならず、Time’s Upの代弁者としてスピーチを行った。グラミーでケシャをステージに招き入れた際には、彼女は歓声を上げるオーディエンスの前でこう語った。「争いは望まない。でもこれはビジネスなの」

その言葉は、トランプ政権下における彼女のマインドセットを示している。彼女の願い、それは敵対する相手への攻撃ではなく、彼らが考え方を変えることだ。「ホワイトハウスにいる人々との対話は実現しないかもしれない」。彼女はそう話す。「それでも、映画や音楽やテレビでのスピーチを通じて、彼らに私たちの声を聞かせることはできるかもしれない。その大半はきっと、ただテレビのスイッチを切るでしょうけどね」

アルバムの発売を2週間後に控え、彼女はニューヨークのホテルの一室にいた。「不安もあるけど、覚悟はできてるわ」。そう話す彼女からは、たくましさと脆さが等しく感じ取れる。今は涙を流している場合ではないということなのだろう。「この世を去っていった私のヒーローたちは、私たちが恐怖を抱えて生きていくことなんて望んでないはずだから」。活動家としての自身の主張にフォーカスした作品ではなくとも、『ダーティー・コンピューター』のあらゆる音からは彼女の信念が感じ取れる。アトランタでバンドとのリハーサルを終えたとき、彼女はメンバーたちにこのアルバムのアメリカ的な部分を強く意識してほしいと話していた。彼女にとってのアメリカ、それは居場所のない人々やアウトサイダーを受け入れる場所だ。かつて自らをウイルスに侵されたコンピューターと表現した彼女を、この国が受け入れてみせたように。

彼女は自身の表現に、よりパーソナルな部分を反映させることの意義を知っている。より保守的なリスナーに自分の音楽を届けるには、自分自身の物語について語らなくてはならないということを、彼女は映画に出た経験から学んだという。「『ドリーム』を観たある白人の共和党議員が、こんなツイートをしてたの。『この黒人女性たちがいなければ、我々の宇宙開発は大きく出遅れていたことだろう。彼女たちが受けた扱いの酷さに、心を痛めている』。とても真摯で、勇気付けられる思いだったわ」

カンザスにいる家族が本作を聴いてどう思うのか、モネイはやはり気にしている様子だった。彼らの意見は、彼女にとって何より大きな意味を持っているのだろう。もし従来のファンが離れてしまったとしても、彼女が後悔することはない。『ダーティー・コンピューター』は彼女の新たなチャプターの幕開けを告げるアルバムであり、それに伴うリスクを彼女は自覚している。

「私自身の経験から生まれた表現が、人々の思いを代弁するものであってくれたらって思う」。赤と黒の団子を思わせるジャケット、真紅のパンツ、そしてホテルに備え付けのタオル生地のスリッパという服装の彼女は、プロモーション活動を終えて戻ってきたホテルの一室でそう語った。「失敗を犯すかもしれないし、土壇場での対応を迫られることもあると思う。でも、私はそういう過程を楽しみたいの」。小さなため息をつきつつも、その声と眼差しには逞しさがみなぎっている。「今という時代を生きていくために、私たちは力を合わせないといけない。世界中の汚れたコンピューターたちと人々の心を通わせること、それが私の使命なの」

Translated by Masaaki Yoshida

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