ジャネール・モネイが語る、セクシュアリティの秘密、プリンスとの関係

ジャネール・モネイ(Photo by Matt Jones for Rolling Stone)



Wondaland Arts Societyの本部オフィスは、カンザスシティとマンハッタンでモネイが過ごした日々の中で思い描いた、彼女にとってのユートピアを体現しているのだろう。アトランタ郊外にある2階建てレンガ造りの建物の外観は、周辺に立ち並ぶ家屋と大差ない。しかし中に足を踏み入れると、ホワイエの壁にかけられたヴィンテージの時計、共用のリビングルームに置かれた純白のソファ、あちこちに見られる無数の本とレコード等、一般家屋にはない豪華な雰囲気が漂う。

その空間のコンセプトは、モネイがカンザスシティで過ごした幼少期の環境に基づいているという。コミュニティにおけるアーティストたちが気軽に足を運び、レコーディングやリハーサルを行い、その成果について仲間たちと意見を交換し合う。当日はアフリカから戻ったばかりだったシンガー/ラッパーのジデーナが顔を出し、逞しい肉体をひけらかすような服装を彼女たちからからかわれていた。

当日は2人組ファンクユニットのディープ・コットンの片割れであり、モネイのコラボレーターでもある陽気なチャック・ライトニングの姿もあった。キヌアの入ったボウルを手に持った彼は、「ピンク」のミュージックビデオの最終バージョンの選択について、モネイと議論を交わしていた(話し合いの結果、「ダーティー・コンピューター」の映像に登場したスポークンワードの部分をカットしたバージョンが選ばれた)。



『ダーティー・コンピューター』の大部分はここで制作され、ハバナ調のデコレーションが施された小さなスタジオが主に使われた。同作には盟友グライムスから、タイトル曲にコーラスで参加したブライアン・ウィルソンまで、多様なゲストが参加している。アルバムのライナーノーツでは聖書の一節が引用されているほか、クインシー・ジョーンズのインタビュー、Monica Sjööの 『The Great Cosmic Mother』、そしてライアン・クーグラーの『ブラックパンサー』にまで言及している。

その中でも一際重要なインスピレーション、それはプリンスからのアドバイスだった。彼女の良き友人だった彼は、本作の仰々しいまでのストーリー性、そして作り込まれたフックを賞賛していたという。「このアルバムの方向性について話したとき、彼は『君らにぴったりだ』って言ってくれたんだ」。ライトニングはそう話す。「僕らの追求していたサウンドに、彼は共感してくれてた」。彼らがインスピレーションとして挙げる音楽に詳しかったプリンスは、自身のフェイバリットでもあったゲイリー・ニューマンをはじめとする様々なアーティストや、当時主流だった機材などについて詳しく語ってくれたという。「思い描いた世界観を表現するために必要なものを、彼が教えてくれたんだ」

ファンの間では「メイク・ミー・フィール」はプリンスとの共作であり、「キス」を彷彿とさせるギターリフが登場するという噂が広まった。「あの曲に彼は関わってないわ」。モネイはそう断言しつつ、プリンスが生きていればプロダクション面で多くのアドバイスをくれたはずだと語る。「アルバムの制作中は、彼の不在を意識せずにはいられなかった」。『ジ・アーチアンドロイド』のCDが手元に届いた時、モネイは手書きのタイトルと花を添えて、真っ先にプリンスのところに持っていったという。「アルバム制作を進めながら、『プリンスなら何ていうだろう』って何度も考えた。でももう彼の声を聞くことはできない。進むべき道を示してくれた人物を、私は永遠に失ってしまった」

スティーヴィー・ワンダーもまた、早い段階からモネイの才能を見抜いていた人物の1人だ。ワンダー自身の提案によって録音されていた2人の会話は、『ダーティー・コンピューター』にインタールードとして収録されている。数年前、彼女は2人のヒーローをめぐる困難な状況に立たされたことがあった。プリンスのマディソン・スクエア・ガーデン公演と、ワンダーのロサンゼルス公演の日程が被り、モネイは両者からゲスト出演を依頼されていた。プリンスは彼女に、スティーヴィーのショーに出るよう促したという。


2013年、ステージで共演したプリンスとモネイ「制作中は彼の不在を意識せずにはいられなかった」(Photo by Kevin Mazur/WireImage for NPG Records 2013)

Translated by Masaaki Yoshida

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