ローリング・ストーンズ欧州ツアー初日、10年ぶりのダブリン公演レポート

最初のピークが訪れたのは、ジミー・リードの「ライド・エム・オン・ダウン」のストーンズらしいワイルドなカバーで、ジャガーがハーモニカをかき鳴らしたとき。そのあと、ジャガーは「もう何百年も演奏していない曲」と前置きをして、『刺青の男』に収録のブルースの名曲「ネイバーズ」を演奏した。アルバムに収録されているよりも、やや長めの演奏。リチャーズとウッズがチャック・ベリーのフレーズを織り交ぜると、ワッツも思わず笑みがこぼれた(最後に彼らがこの曲を演奏したのは200年、「フォーティー・リックス」ツアーの時だった)。もう一つの山場は、「ミッドナイト・ランブラー」。ここまで抑え気味だったジャガーは、ステージの花道に歩み出て激しく上下にジャンプ。世にも恐ろしい物語を歌い始めた。他のメンバーは1か所に固まり、ディープなブルースのメロディにどっぷり浸っている。スタジアムをブルースのライブハウスに変えることができるのは、ストーンズを置いて他にいるまい。

ソロパートでは、リチャーズが珍しい1曲を披露した。激しい「ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン」のあと、いつもなら「ハッピー」へ続くのだが、この日はアコースティックに持ち替えて、『ヴードゥーラウンジ』のスロウなバラード「ザ・ワースト」を演奏した。「最初に言ったと思うが/おれは最悪なやつ/お前たちがつるむようなやつさ」と歌うリチャーズ。バックボーカルのバーナード・ファウラーのハーモニーにウッドのスチールギターが相まって、リチャーズのしわがれ声は深く胸に響いた。ウッドは昨年、肺がんの恐れがあることを公表したが、この日は非常に陽気で、キラキラ光るスニーカーを履き、最高のプレイを見せてくれた。

いよいよコンサートも大詰め。「ブラウン・シュガー」「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」に続き、激しい「ギミー・シェルター」。ステージには、ヒラリー・クリントンの大統領選挙キャンペンのスローガン「Stronger Together(一緒のほうが強い)」や、ウイメンズマーチを連想させる映像が投影された。最後の締めは「サティスファクション」。リチャーズは小さなギブソンのソリッドギターで演奏し、さらにガレージ感倍増。2012年、それまで活動を休止していたストーンズが50周年アニバーサリーツアーで久々に表舞台に現れたときは、これが見納めだろうなと思われた。だが彼らはそのあともコンスタントにツアーを続け、ブルースのカバーアルバムもリリース。噂では、2005年以来となるオリジナル楽曲のニュー・アルバムもリリースするそうだ。「どこまで進化できるか、見てみたいんだ」と、3年前ローリングストーン誌のインタビューでキース・リチャーズは語った。「バンドをこうしていきたいとか、特に何か目標があるわけじゃない。ただ、どこまでいけるか見てみたいのさ」。そう、昨夜の彼らはまだ旅の途中だ。



セットリスト
「悪魔を憐れむ歌」
「ダイスをころがせ」
「黒くぬれ!」
「Just Your Fool」
「ライド・エム・オン・ダウン」
「ネイバーズ」
「ワイルド・ホース」
「無上の世界」
「イッツ・オンリー・ロックンロール(バット・アイ・ライク・イット)」
「ホンキー・トンク・ウィメン」
「ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン」
「ザ・ワースト」
「ミス・ユー」
「ミッドナイト・ランブラー」
「スタート・ミー・アップ」
「ジャピン・ジャック・フラッシュ」
「ブラウン・シュガー」

アンコール

「ギミー・シェルター」
「(アイ・キャント・ゲット・ノー)サティスファクション」

Translated by Akiko Kato

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