来日控えるライ、繊細なサウンドに込められた美意識を柳樂光隆が掘り下げる

ライの中心人物、マイク・ミロシュ


ニューアルバムを踏まえた来日公演の展望

―あとはさっきの話にもあったように、アレンジの装飾が絞られたことで、サウンド自体はより機能的になったともいえそう。

柳樂:アルバムの完成度が高過ぎるから、聴く人によっては「全曲一緒じゃん」と思われそうだけど、その中にある繊細な濃淡こそが大事なんだと思う。だからこそ、モノクロームのジャケが一層映えるというか。ライがやりたいことは、歴史を遡るとマイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』とも近いんじゃないかな。

―というと?

柳樂:『カインド・オブ・ブルー』って水墨画や書道に例えられることが多いんですけど、空間的で音数も抑えたうえで、そのなかでサウンドにどう色をつけていくか、みたいな。墨の濃淡や滲み方だけで、景色を描くミニマムな音楽ですよね。その話でいうと、ライみたいなところまで世界観が統一されているのは珍しい気がする。ライが特別な存在なのは、こだわりを徹底しているからとも言えるのかも。

―美学の度合いが違うというか。

柳樂:近年だとコラボありきで話題にしたり、収録曲のテイストが全部違うミックステープみたいな作品が多いじゃないですか。でもライのアルバムは、一枚を通して世界観が貫かれていますよね。言い換えれば、アルバムというものの価値を信じているというか。この美意識は、いまのアメリカのR&Bにはない気がする。強いていえば、ジャミーラ・ウッズやノーネームといった、チャンス・ザ・ラッパー周辺のシカゴの一部の人たちや、ムーンチャイルドやキングあたりは近い気がするけど、こういう品格って最近なかったですよね。

―そのライが来日公演を行うわけですけど、期待値を高めるためにも、最近のライブ映像をぜひチェックしてもらいたいですね。

柳樂:新作が生演奏にシフトしているのもあって、これまで以上に見どころの多いステージになるんじゃないかな。



―たしかに、2013年のフジロックでは「レコーディングプロジェクトによるライブ」という感じが拭えなかったんですよ。でもYouTubeで観る限り、近年はライブバンドとして明らかに底上げされているみたいです。

柳樂:バンドメンバーもライの美学を深く理解した、センスのいい人が集まっている感じがしますよね。演奏面もテクニカルとか派手とかじゃなくて、楽曲に適したカラーやフィーリングを奏でることを意識している。それに何より、ミロシュの歌声を生で堪能できるなんて素敵じゃないですか。



Rhye Japan Tour 2018
2018年5月17日(木)大阪・梅田CLUB QUATTRO
2018年5月18日(金)東京・ZEPP DiverCity Tokyo
http://smash-jpn.com/live/?id=2844

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