U2の舞台監督が語る、壮大なワールドツアーの全貌とライブ演出の未来

ーいつもBステージという部分があって、メンバーがファンをステージにあげて、何年もプレイしていない曲のギターをそのファンに弾かせますよね?

それはメンバーが独自に考えてやっていることだし、突発的なことなのでリハーサルではできない。昔、そういうアドリブを自然にできるように念入りにリハーサルすると冗談を言って、みんなで笑っていたけどね。とにかく、最初に全体像をしっかりと組み立てた上で、どこで枠組みを外すか考えないといけないわけだ。ファンをステージにあげることも、そうやって考えたことだと思うよ。

ーこのツアーは2019年まで続くと思いますか?

それは全くわからないけど、そうなるかもしれない。このツアーを今後一生続けるってこともないわけじゃないから(笑)。

ー4年間で3本のツアーを行ったことで、あなた自身、ある意味で燃え尽きた感覚はありますか?

そうなるのが普通かもしれないね。でも、さっきも言ったけど、ここ5年間でやってきたことは明確なコンセプトに基づいていたから、舞台美術のデザインという点では普段やっているツアーよりも重荷は軽かったと言える。変な話だけどね。それに、今回のツアーの骨格はInnocenceとExperienceだし、ライブ中にたくさんのサプライズがあるけど、そのサプライズに舞台美術は含まれていない。それが重荷を少し軽くしてくれた理由だね。普段よりも疲れていてもいいはずなのに、物事が上手く行くと人は元気になるものだ。僕たちの年齢になっても、これだけの規模で新しいものを作ること自体が元気とヤル気を刺激してくれる。もちろん、肉体的にはかなり辛いよ。みんな年寄りになり始めているから、若い頃に比べて移動やスタミナの点ではキツい。でも、クリエイティヴな点では、これまで以上に新鮮な気持ちでやっている。それが僕たちの原動力なのさ。

ー2021年にバンドが『アクトン・ベイビー』発売30周年記念ツアーをやりたいと言った場合には、それを実現したいと思いますか?

もちろんだよ。やらない法はないだろう? バンドがヨシュア・トゥリーの記念ツアーを行う意見を出したとき、僕は驚いて笑ってしまった。あのときはボノが直接僕に教えてくれたよ。でも笑ってしまったのは、彼らが一番やりそうもないことだったからさ。でも、もうやってしまったから、そういう先入観は全部なくなったし、もう何を言われても驚かないよ。

ータルサでの初日を観るのですが、もう待ちきれないです。

初日でまごついている僕たちをしっかりと見てくれ(笑)。実はすべてが円滑に動き出すのは2日目だから、初日は僕たちの興奮度が一番現れるんだよ。

ーInnocenceツアーの初日にジ・エッジがステージから落ちましたよね。あれは見ていましたか?

いや、見ていない。あれはコンサートの最後の最後で起きた。彼らと一緒にツアーを回っている僕たちは車両で移動するわけだけど、その車両をランナーと呼んでいる。ライブの最後の曲になると、僕たち舞台スタッフはステージから離れてランナーに乗り込むんだ。だからホテルに戻るまでジ・エッジのことは知らなかった。無事に終わったとみんなで喜んでいたら、誰かが「最後にジ・エッジがステージから落ちた」と教えてくれた。僕たち全員が「嘘だろう?」となった。その前にボノがバイクから落ちてツアーを延期していたからね。あれは確かバンクーバーで、ホテルでエレベーターを待っていたら、スタッフの一人がYouTubeでジ・エッジの落下場面を見つけたのさ。あっという間にアップされていたけど、彼が無事だったのは奇跡だね。



ー彼が腕を折っていたとか考えると……。

その可能性はあっただろうね。あのコンサートを実現するまで5年も待ったのに、初日で終わりってこともあり得た。今回のツアーの初日が無事に終わることを祈っていてくれ!

Translated by Miki Nakayama

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