音楽・人・アート「媒介」の力で広がる小林武史のクリエイティブ

『Takeshi Kobayashi meets Very Special Music Bloods』をリリースした小林武史(Photo by Yoko Yamashita)

音楽プロデューサーの小林武史が、近年のプロデュース作品を集めたアルバム『Takeshi Kobayashi meets Very Special Music Bloods』をリリースした。アルバムについてのトピックを中心に、最近思っていることなどざっくばらんに語ってもらった。

本作は、2年間にわたり携わってきた東京メトロのCMシリーズを中心に、様々なプロジェクトのために制作された楽曲を集めたもの。Mr.Childrenの桜井和寿やSalyu、Charaといった長年の「盟友」たちはもちろん、佐藤千亜妃(きのこ帝国)や尾崎世界観(クリープハイプ)、谷口鮪(KANA-BOON)ら最近知り合ったミュージシャンとのコラボ曲が並んでおり、結果的に小林武史の「ファミリー・ツリー」的な作品となっている。

2003年に非営利団体「ap bank」を設立し、2017年には東北・石巻にてアートと音楽と食の総合芸術祭「Reborn-Art Festival」を立ち上げるなど、音楽以外の活動も精力的に行ってきた小林。その原動力はどこから来ているのだろうか。

─本作は、小林さんの近年の楽曲を集めた編集盤でありながら、全体で一つのテーマを持ったコンセプトアルバムのようにも感じられます。

小林:そもそもは「Reborn-Art Festival」のプレイベントを宮城県石巻市でやることが決まって。雲雀野埠頭という何もない公共港だったのですが、海際であえて「ゼロからの立ち上げ」をコンセプトにすること、それ自体が一つの作品にもなると思ったんですね。しかもそれは、自分が手がけていた「東京メトロ」のCMシリーズともつながるものになると。実際、プレイベントの広告を地下鉄で流してもらい、CMソング第一弾となったYEN TOWN BANDの「my town」、続くBank Bandの「こだま、ことだま。」は、いずれも「Reborn-Art Festival」へとつながっていきました。

しかもCMディレクターが箭内道彦くんで、彼の作る映像の中に「都市の中の営み」というテーマがある気がしたんです。都市というのは、お金や利便性、仕事などを求めて人が集まってくるところであり、元々は他人同士だったところに小さな営みが生まれる。その集積で成り立っているんだという。実際、箭内くんがどう考えているかは分らないけど、それは僕らが被災地でアートフェスを開催し、地域の営みをもう一度取り戻したいという思いとつながったような気がしたんですよね。



─収録された多くの曲は、複数のアーティスト同士によるコラボレーションという形になっています。これも、今おっしゃった「つながり」というキーワードを意識してのものだったのでしょうか。

小林:CMの話が決まった段階で、将来的にアルバムを作るという前提で動いていたりもしたので、そこはまあ、メーカー側の思惑もあったと思います(笑)。ただ、それとは別に「Reborn-Art Festival」をやっていく中で、「生きる技」……「生きる」とはどういうことなのか、浮き上がってくるような経験をいくつもするわけですね、ああいう場所にいると。「生きる」の根底にあるのは「つながり」であり、「出会う」ということが全てだと。それは微生物レベルでも言えることだと思うんですよね。我々は出会うことで生きている。その感覚は、「東京メトロ」で企画していたコラボともシームレスにつながり、同時進行で進んでいったというところもありました。

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