1Dハリー・スタイルズ、トップランナーとしての自信と覚悟に満ちた東京公演をレポ

5月12日に開催された東京公演でのハリー・スタイルズ(Photo by Helene Pambrun)

昨年12月に続いて、5月10日と12日に来日公演を実施したハリー・スタイルズ。今回は5月12日に開催された東京公演のレポートをお届けする。

クラシック・ロックを現代的に昇華させ、出だしから最高潮

活動休止中のワン・ダイレクション(以下1D)のメンバーで、昨年は初のソロ・アルバム『Harry Styles』をリリースしたばかりか、クリストファー・ノーラン監督作品『ダンケルク』への出演で俳優デビューも飾るなど、ますます充実したキャリアを重ねているハリー・スタイルズ。彼の2度目の来日公演が5月10日に兵庫県・神戸ワールド記念ホールで、12日には東京・幕張メッセにて開催された。今回は、なんとゲスト・アクトとして米国ロサンゼルス出身の女性4人組バンド、ウォーペイントを引き連れての公演。筆者は東京公演を観に行ったのだが、この意外な組み合わせにフロアは開演前から大きな熱気に包まれていた。

定刻の17時を回ると、まずはウォーペイントの4人が登場。上手からジェニー・リー・リンドバーグ(Vo, Ba)、エミリー・コカル(Vo, Gt)、先日「T T」名義でソロデビューを果たしたテレサ・ウェイマン(Vo, Gt)、そしてステラ・モーツガワ(Dr)が一列に並び、およそ40分のステージを展開。呪術的なビートの上で、シンプルかつトリッキーなフレーズを幾何学的に組み合わせながら、青白い炎のようなサイケデリックなサウンドスケープを構築していく。ハスキーで中性的なエミリーのヴォーカルに、透明感のあるジェニー&テレサの歌声が混じり合い、唯一無二の響きが会場を包み込む。そのクールで物憂げな佇まい、知的かつ官能的な楽曲の数々とは裏腹に、MCにおける天真爛漫なキャラクターが、初見のオーディエンスをもグッと惹きつけていた。最後はエミリーが、「サンキュー、ハリーさん!」と挨拶しステージを去った。

ステージ転換を経て18時15分を過ぎた頃、客電が落ちると場内に黄色い声援が響き渡る。先にセッテイングを済ませた4人のサポート・メンバー(女性ドラマーとキーボーディスト、男性ギタリストとベーシスト)が、「Only Angel」のイントロを奏でると、満を持して遂にハリー・スタイルズが登場した。ストライプのダークスーツに白いTシャツという出で立ちで、ステージの端から端まで走りながら客席に向けて投げキッス。早くもファンのヴォルテージは最高潮だ。

ハリー・スタイルズ

ハリー・スタイルズPhoto by Helene Pambrun

続く「Woman」は、ポール・マッカートニーの「Let Me Roll It」を思わせるタイトなロックンロール・ナンバー。硬くコンプレッションされたピアノのバッキングや、ギブソン・レスポールのヴィンテージな響きがオトナのロックファンをも唸らせる。かと思えば間奏で、「いらっしゃいませー!」と屈託のない笑顔をファンに向けるなど、「アイドル」としての振る舞いも忘れない。バンドの息もぴったりで、「Ever Since New York」ではメンバー全員で美しいアカペラを披露した。ちなみにキーボーディストのクレアは大阪出身で、神戸公演では彼女を交えたトーク・コーナーもあったという。

その後もアルバム『Harry Styles』からの楽曲を中心としたメニュー。ボトルネックによるギターフレーズが、ジョージ・ハリスンのソロやザ・バンドの楽曲を彷彿とさせる「Two Ghosts」、キンクス〜ブラーと続く、英国伝統のエスプリを引き継いだような「Carolina」など、クラシック・ロックのエッセンスを抽出しながら、それを現代のポップミュージックへと昇華させ、10〜20代女性中心のファンへ送り届けている姿には頼もしさすら感じてしまった。

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