ローリングストーン誌が選ぶ「2017年ホラームービー・ベスト10」

9位:『ぼくらと、ぼくらの闇』

ケヴィン・フィリップスの華々しい長編デビュー作。前半3分の2は郊外の町に住む仲良し男子2人(オーウェン・キャンベルとチャーリー・タンが熱演)を中心に、控え目で繊細な人物描写が続く。やがて悲劇的な事件が起き、それを隠蔽しようと試みるがうまくいかず、2人の友情はもろくも崩れる。この時点から物語は正統派スリラーへと転換し、高校生たちは殺されまいと逃げ惑う。ジャンルの組み合わせが功を奏し、青春時代に誰もが直面する日常的な恐怖――純真さを一度に失う苦悩が見事に描かれている。

日本公開:なし ※Netflixにて配信中

8位:『The Devil’s Candy(原題)』

オーストラリアのカルト映画監督ショーン・バーンによる、待望の最新作。2009年の『ラブド・ワンズ』に続く今作は不気味な憑依系スリラー。ヘビメタ好きの画家(イーサン・エンブリー)が、家族とともに、とある田舎のいわくつきの家に越してくる。そこで彼は記憶喪失に見舞われ、カンバスをグロテスクな絵で埋め尽くし始める。悪魔が取りついたのか、それとも彼と妻(シリ・アップルビー)に向けられた「娘の身に危険が迫っているぞ」という警告か・・・。バーンズ監督は世にも恐ろしい映像を紡ぎ出し、子供に甘い世の親たちを震いあがらせた。

日本公開:未定

7位:『イット・カムズ・アット・ナイト』

ある種の黙示録的な作品。誰が・何を・なぜ、といったことは明らかにされないが、とにかく気性の荒いサバイバー(ジョエル・エドガートンがいつもよりもキレ味抜群)が感染した死体を焼き払い、日暮れになると、何物も忍び込まないようにと厳重に扉に鍵をかけている、という設定で十分。妻(カルメン・イジョゴ)と10代の息子(ケルヴィン・ハリソン・Jr)を守る男の前に、別の男とその家族が現れ、狂いが生じる。信頼関係が築かれ、そして崩壊する。前年、デビュー作のホームドラマ・スリラー『Krisha』で観客をあっと言わせたトレイ・エドワード・シュルツが今回テーマに選んだのは、我々の中に潜むサイコ性。特にこれという仕掛けはなくとも、じわりじわりと忍び寄る恐怖を全編にわたって描き出した。モンスターは登場しないが、人の心をもて遊ぶ、嫉妬という名の怪物にはご用心。こいつは人間の胸の奥底で息をひそめている。

日本公開:2018年11月予定

6位:『スプリット』

2015年の『ヴィジット』を見た人なら、ふとこんな思いにかられただろう。「ひょっとしたら・・・M・ナイト・シャマラン監督はまだイケるんじゃないだろうか?」 続く最新作で、監督はいまや完全に復活モードに入ったことを証明した。アニャ・テイラー=ジョイ(『ウィッチ』の主演女優)は、友人2人とともに駐車場で見知らぬ男に誘拐される。やがて3人は、自分たちを誘拐したのが複数の人間であること――複数の人間が1人の身体を共有していることを知る。ようするに誘拐犯は多重人格者なわけだが、さらに、それぞれの人格が恐れおののく「ビースト」という人格が存在する。シャマランお得意の謎ハラハラどきどきが非常によくまとめられているので、大きなパズルの1ピースとして語られる最後のオチも、映画の出来を損ねることはない。当編集部としてはぜひとも、テイラー=ジョイを「最後に生き残る女の子」殿堂入りに推したい。

日本公開:公開終了 ※DVD販売、デジタル配信済み

5位:『フェブラリィー悪霊館』

『サイコ』で主役を演じたアンソニー・パーキンスの息子で、監督兼脚本家のオズ・パーキンスは、生まれながらにしてホラー体質に違いない。超常現象を扱った本作は、当時のヒッチコックの系統を受け継ぐ作品だ。高級ホテルのような私立女子校で起きた、身の毛もよだつ事件。ルーシー・ポイントンとキーナン・シプカ演じる2人の女子学生が、両親が迎えに来るのを待ちながら、校内に取り残される。同時進行するもうひとつのストーリーではエマ・ロバーツが登場する。2つの物語は映画の後半でつながり、最後には恐ろしいほどはっきりと全貌が明らかになる。悪魔崇拝的な描写は別としても、ともすると安っぽくなりがちな筋書きを、自分の犯した過ちに思い悩む子供たちの成長物語に変換して、情緒豊かに描いている。

日本公開:終了 ※DVD販売、デジタル配信済み

Translated by Akiko Kato

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